アンドロイド・ニューワールドⅡ
「じゃあ、この次の曲も、次の曲も、やっぱり国歌なの?」

「はい、そうですか…」

と、私は答えました。

奏さんは、真顔で私を見つめていました。

何か不思議なものでも見えたのでしょうか。

「そういう作業用BGMっていったら…もっとリラックス出来る曲とか…。むしろ、もっとアップテンポで格好良い曲とか…。いや、アップテンポな国歌もあるけど…」

と、奏さんはぶつぶつと呟いていました。

大丈夫でしょうか。

「何か問題がありましたか?」

「あ、いや。問題って言うか…。…その、これは…瑠璃華さんの趣味?」

「?いいえ。国家を代表する、勇ましく悠然なる歌を聴けば、奏さんも意欲的にお金の計算が出来るのではないか、と思ったからです」

「あ、成程…。一応、瑠璃華さんなりの根拠はあったんだ…」

「?」

と、私は首を傾げました。

何ですか、根拠とは。

国歌。誰もが知っていて、同じ音楽を共有出来る、素晴らしい歌です。

それをBGMに選ぶのが、何か間違っているのでしょうか。

「国歌のお陰で、きっと作業が捗ると思います」

「う、うん…。どうなんだろう?知らない国の国歌ばっかりだけど…。まぁ…何もBGMがないよりは、捗るかな…」

と、奏さんは何とも、煮え切らない返事をしました。

もしかして、国歌に不満があるのでしょうか。

国歌に不満があるだなんて、国によっては消されますね。

この国が平和で良かったです。

ともあれ。

何だか、奏さんはあまり乗り気ではない…国歌から力を得ていない…気がしたので。

次の道具を持ち出すとしましょう。

こんなときの為に、他にも作業効率の上がる、便利グッズを用意してきました。

備えあれば憂いなし、ということですね。

「分かりました。では奏さん、次はこちらをどうぞ」

「え、何…。うわっ、それ何?」

「これは人呼んで、アロマディフューザーというものです」

と、私は答えました。

そして、作業をする机の上に、アロマディフューザーをセットしました。

これが、二つ目の作業効率アップアイテムです。

これならどうでしょうか。奏さんも、きっと喜んでくれるに違いありません。
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