アンドロイド・ニューワールドⅡ
しかし。

10分待てども20分待てども、なかなか注文したチョコレートは、やって来ません。

久露花局長は、非常にそわそわしているようで。

「ねぇ。忘れられてる?私達もしかして、忘れられてるのかな?」

と、朝比奈副局長に聞きました。

「いえ…でも、飲み物は来ましたから…」

「だよねぇ?人も多いし…注文が立て込んでるのかなぁ?」

と、局長は言いました。

どうなのでしょう。

そもそも、普通飲食店で、注文した商品が届くまでの時間は、どのくらいが相場なのか分かりません。

そこで。

「奏さん、つかぬことをお聞きしますが」

「ん?何?」

「喫茶店でメニューを注文した場合、大体どれくらいの時間で、商品がテーブルに届くものなのでしょう?」

と、私は奏さんに聞きました。

「え?どうしたのいきなり?」

「いえ。少々気になったもので」

「どうなんだろう…?店によると思うけど…大体15分くらいしたら、全部揃うんじゃない?」

と、奏さんは言いました。

そうですか。15分ですか。

久露花局長と朝比奈副局長が注文してから、既に20分以上が経過しています。

つまり、相場よりは遅れているということですね。

チョコレートに関することでは、全く堪え性のない久露花局長にとっては、とても長い時間だと思われます。

あまりに待ちくたびれると、局長のチョコレート欠乏症による、禁断症状が発生する恐れがあります。

キッチン係の方は、出来る限り急ぐことをおすすめします。

しかし。

「遅いなー。まだかな?」

「学生の喫茶店だからなぁ。モタモタしてるんじゃない?」

「でも、ホットケーキしか注文してないのに」

「もう待ちくたびれたよ」

「この後講堂で、演劇部の発表を見る予定だったのに…このままじゃ間に合わない」

と、他のお客さんからも、不満の声があがっています。

どうやら、久露花局長のみならず、他のお客さんの注文も遅れているようですね。

更には。

「ちょっとぉ。もう30分近くも待ってるんだけど?いくらなんでも遅過ぎない!?」

と、クレームを入れるお客さんの声も聞こえてきました。

とうとうクレームが入りましたね。

30分と言えば、カップラーメンの10倍ですから。

そう考えると、とんでもない長時間待たされているように思えます。

それに対し、

「す、済みません。一つずつ作ってますから…」

と、ホール係のクラスメイトは答えました。

クレーム対応に慣れていないようですね。

素人ですから、当たり前ですが。

しかし、そのお客さんは、随分とイライラしているようです。

「この後、別の場所で待ち合わせの予定があるんだけど?間に合わなかったらどうしてくれるの?」

「す、済みません。出来るだけ急ぎますから…」

「早くしてよ。学生だから、少々は目を瞑ってあげようと思ってたけど。金取ってる癖に遅過ぎでしょ」

「は、はい…」

と、ホール係のクラスメイトは、萎縮したように返事をしました。

…ふむ。

では、キッチンの方は、どのような様子なのでしょう?

私は、聴覚の有効範囲を更に広げ。

注意深く、キッチンの様子を伺いました。
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