アンドロイド・ニューワールドⅡ
私はすぐさま、奏さんの車椅子を押して、お店のキッチンに向かいました。

話には聞こえていましたが、やはりそこは阿鼻叫喚です。

私と奏さんがやって来たことにも、すぐには気づかないほど。

そして、私達がやって来たことに気付いたクラスメイトの一人が、ようやくこちらを向きました。

「ちょっと、何?何しに来たの?今忙しいんだけど?」

と、クラスメイトは言いました。

忙しくて気が立っているせいか、非常につっけんどんな言い方です。

忙しいのは分かりますが、その言い方はないのではないかと思います。

「はい、それは見れば分かります」

「だったら邪魔しないでよ。売り上げは後で持っていくから」

と、クラスメイトは言いました。

どうやら、私達があまりに暇を持て余して、自分から売り上げ金の回収に来たのかと誤解されたようです。

しかし、それは違います。

「皆さんがとても忙しそうなので、私達は手伝いに来たのです」

と、私は言いました。

「は?」

「猫の手も借りたい状況のようですし、アンドロイドの手で良ければお貸ししますね」

と、私は言いました。

そして、まず最初にしたことは。

冷めたコーヒーカップの中身を捨て、新たにコーヒーメーカーをセットしました。

次に、ホール係が注文を取ってきた、伝票を確認しました。

成程、今これだけの注文が入っているのですね。

「間違ってチョコソースをかけてしまったと言っていましたね。問題ありません、チョコソーストッピングを頼んでるお客さんもいます。そちらに回しましょう」

「え?」
 
と、クラスメイトは首を傾げていました。

忙し過ぎて、全ての注文内容を把握出来ていないようです。

「奏さん、用意の出来たお皿を回すので、アイスクリームと生クリームをトッピングしてください」

「あ、うん」

と、奏さんは頷きました。

トッピング作業だけなら、動き回らずとも出来ますからね。

トッピング作業が必要なメニューは、全て奏さんに回します。

「生焼けのパンケーキは、トースターで焼き直しましょう。フライパンの方は新たにパンケーキと…フレンチトーストも注文が入っていますね。調理器具お借りします」

「あ、え、ちょっと」

と、キッチン担当のクラスメイトは声を上げましたが。

火を通す必要のあるメニューは、早く調理してしまわないと、いつまでたっても出来上がりません。

それから…。

「紅茶用のお湯は、やかんで沸かすのが理想ですが…今はガスコンロの空きがありません。ポットのお湯で代用しましょう」

と、私はポットのお湯をティーカップに注ぎ、それぞれにティーバッグを入れ。

せめて風味豊かにしようと、カップの上にソーサーを置き、蒸らすことにしました。

これでしばらく放置ですね。

でも放置し過ぎると、渋くなってしまうので要注意です。

「それから、チーズケーキとティラミス、そして久露花局長のチョコケーキ、マフィンを解凍して…」

と、私は言いながら、冷凍庫からそれぞれのケーキを出し、お皿に並べました。

「次はパフェですね。こちらは焼き時間や解凍時間は必要ありませんので、すぐに出せます」

と、私は言いながら、パフェのグラスを三つ用意しました。

現在注文が入っているのは、フルーツパフェ、いちごパフェ、久露花局長のチョコパフェの三つですから。

同時進行で作りましょう。

まずはコーンフレークを敷き、三種それぞれにソースをかけ、冷蔵庫から取り出した生クリームを絞り、ヨーグルトをグラスに詰めます。

その上に、それぞれバニラ、いちご、チョコアイスクリームを、アイスピックで掬って入れます。

それから、また三種のソースをそれぞれにかけ。

フルーツパフェには缶詰のフルーツを、いちごパフェにはカットしたいちごを、チョコパフェにはチョコブラウニーを、それぞれトッピングします。

完成ですね。

私は、完成したパフェを3皿、お盆に乗せました。
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