アンドロイド・ニューワールドⅡ
まず最初に運ぶべきは、勿論。

「ちょっと、まだなの?もうキャンセルするわよ!?」

と、未だにクレームを入れている、あのお客さんです。

「い、今急いで作ってますから…」

と、ホール係のクラスメイトは、一生懸命お客さんを宥めようとしていました。

しかし、もうその必要はありません。

何せ、私が来ましたから。

「どうどう、落ち着いてください。どうどう」

と、私は、お客さんを落ち着かせようと言いました。

「ちょ、な、何…?」

と、これにはクレームをつけていたお客さんも、静かに首を傾げました。

更には。

「く、久露花さん…?何でここに…?」

と、ホール係のクラスメイトは言いました。

何故私がここにいるのか、理由を説明してあげたいのですが。

残念ながら、今はそれどころではありません。

まずは、このクレーム客の対応が先です。

「大変お待たせしました。アールグレイティーレモンと、いちごソースのパンケーキをお持ちしました」

と、私は言いながら、器用に腕を動かし、お盆を下ろして、注文したメニューをテーブルに置きました。

「ご注文は以上ですね?」

「え、えぇ…」

「それではごゆっくり」

と、私は言いました。

注文したメニューを持ってきたのですから、これでクレーム対応は一件落着でしょう。

更に、私はその足で、パンケーキとケーキを注文したお客さんのテーブルに、早足で移動しました。

「はい、お待たせしました。お茶の方もどうぞ」

「え、あ、ど、どうも…」

「はい、こちらのテーブルは確か…メープルパンケーキをご注文でしたね、はい、どうぞ」

「…ありがとうございます…」

「こちらのテーブルは、ダージリンティーミルクと、アッサムのミルクですね。お待たせしました。ケーキの方はもう少々お待ち下さい。鋭意作成中です」

「あ、はい…」

「それで次は…あ、久露花局長ですね」

「ぶふっ。る、瑠璃華ちゃん、なんて格好してるの?」

と、局長は私を見て、噴き出しながら言いました。

なんて格好、と言われましても。

今は非常時ですから。これは不可抗力というものです。

「お待たせしました、チョコパフェをどうぞ」

「あ、ありがとう…」

「ケーキとマフィンは、今鋭意作成中です。もう5分、いえ、3分待って頂ければ、マッハで持ってきますので」

と、私は言いました。

今解凍中ですから。そろそろ常温に戻ることでしょう。

「う、うん…。それは良いけど、物凄いバランス感覚だね…?」

「局長が私の身体を、バランス良く設計してくださったお陰です。今、とても役に立っています」

「そんな形で…役立つ日が来るとは思わなかったよ」

「何事も、何がどのような形で役立つ日が来るか分からない、という良い教訓になりましたね」

「…そうだね…」

「では失礼します」

と、私は言いました。

そして、局長と副局長のテーブルの隣、先程やって来たばかりのお客さんのもとに行きました。

「いらっしゃいませ。お冷やと、メニュー表をどうぞ」

と、私は言いながら、頭に乗せていたメニュー表を、テーブルの上に置きました。

ふぅ。頭の上がスッキリしましたね。

「ど、どうも…」

と、お客さんは、ポカンとして呟きました。
< 198 / 467 >

この作品をシェア

pagetop