アンドロイド・ニューワールドⅡ
などという、話をしてから。

私と奏さんは、早速お金の計算を始めました。

ようやく、会計係としての仕事に取り組めますね。

成程、初めてやってみて分かりました。

奏さんの仰っていた通り、とても地味な仕事です。

まずは、紙幣と硬貨を種類ごとに分別し。

それぞれ、その枚数を数えることで、合計額を出します。

やっていることは単純なのですが、如何せん硬貨の枚数が多いので、数え間違いが発生しそうですね。

これが人間であれば、ですが。

私は『新世界アンドロイド』ですので、数え間違えるということはありません。

もしかしてこの仕事は、私が一番適役なのでは?

そう思うと、地味な仕事でも、やり甲斐を感じますね。

奏さんと二人で、作業をしながら。

「どうでしょう奏さん。退屈ですか?」

「え?いや…退屈ではないけど」

と、私は奏さんと、お喋りをしました。

「でも、地味な仕事だよね。毎年のことながら…」

「去年は、奏さんのクラスは何をしたのですか?喫茶店ですか?」

「いや、去年はお化け屋敷だったよ」

と、奏さんは答えました。

ほう。お化け屋敷ですか。

「成程…面白そうですね、お化け屋敷。是非ともお化け役として参加してみたかったです」

「そう?お化け役って、難しくない?」

「いえ、私は必ずやり遂げてみせます。そうですね…まずは手始めに全身の関節を外して、血糊を顔につけて、ケタケタ笑いながら通路を塞ぐとしましょう」

「そっか…。去年瑠璃華さんがいなかったことに、ちょっとだけ感謝したよ。絶叫どころじゃ済まないところだった」

と、奏さんは言いました。

そうですか。

それは、是非ともやってみたかったですね。

「でも奏さんは、去年も会計係だったんですよね?」

「うん」

「一人で、大変ではありませんでしたか?」

と、私は尋ねました。

今年は、私も一緒に会計係をやっているので、手間は二分の一ですが。

去年までは、奏さんお一人でやっていたのですよね?

さぞや、大変だったこととお見受けします。

しかし。

「いや。お化け屋敷のときは、入場料一律500円だったから、ワンコインで計算もしやすかったんだ」

と、奏さんは言いました。

成程。ワンコインだったのですね。

だったら今年のように、10円玉や1円玉が、大量に混じっているようなことはなかったでしょうね。

「大変だったのはその前だな。屋台をやったんだよ」

「ほう、屋台ですか。何を販売したのですか?」

と、私は聞きました。

何の屋台でしょうか。

野菜の詰め放題とかでしょうか?

限られたビニール袋のスペースの中に、いかにして大量の野菜を入れるか…。

その駆け引きとせめぎ合いが、とても楽しそうです。

しかし。

「アメリカンドッグだったよ」

と、奏さんは答えました。

私の予想とは、全然違っていましたね。

「そうですか…。アメリカンドッグですか…」

「え?何でちょっと残念そうなの…?」

と、奏さんは首を傾げました。

私には感情がないので、残念だと感じることはありません。
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