アンドロイド・ニューワールドⅡ
「ともかく…アメリカンドッグのときは大変だったよ」

「値段設定が複雑だったのですか?一本259円とか」

と、私は聞きました。

割り切れない数字だと、計算するのも難しいでしょうね。

しかし。

「いや、アメリカンドッグ自体は、一本300円で、比較的楽だったんだけど」

「はい」

「トッピングするソースによって、追加料金が発生したり、ドリンクやポテトも一緒に売ってたから、結局値段がバラバラで」

と、奏さんは教えてくれました。

成程。アメリカンドッグ自体の値段は分かりやすくても。

トッピングによる追加料金や、サイドメニューの有無によって、一人一人の支払金額が違っていたのですね。

それはまた、喫茶店と同じく、面倒な計算になりそうです。

「その計算を、奏さんがお一人で行ったのですか?」

「うん。なかなか終わらなくて…下校時刻ギリギリまで残って、ひたすら計算してたよ」

「それは大変でしたね」

「うん」

と、奏さんは素直に頷きました。

「今年も、あのときと同じくらい計算が大変だけど…。でも、今年は少しも、苦痛だとは思わないよ」

と、奏さんは言いました。

「瑠璃華さんが手伝ってくれてる…。いや、瑠璃華さんが一緒にいてくれるから。それだけで、全然苦痛じゃない」

「そうですか」

「ありがとうね、一緒にいてくれて」

「お礼を言う必要はありません」

と、私は言いました。

「私は、奏さんの親友ですから。親友を助けるのに、理由は必要ありません」

「…うん、そうだね」

と、奏さんは微笑んで言いました。

さっきまで、お店の方で奏さんも、お怒りになっていたようですから。

少しはリラックスされたようで、良かったです。

ここは、更に奏さんをリラックスさせて、作業効率を上げたいところですね。

「…ではここで、私の持ってきた国歌を流しましょう」

「え?いや、何でそうなるの?」

「え?頼まれたのではないのですか?」

「いや、頼んではない」

と、奏さんは言いました。

成程、国歌はご希望ではないということですね。

分かりました。それでは。

「ならば、アロマディフューザーの出番ですね」

「は?」

「チョコムースの匂いをセットしますので、是非リラックスしてください」

「いや、それも頼んでな…。…って言うか、チョコムースに匂いってあるの…?」

と、奏さんは首を傾げました。

久露花局長が聞いたら、チョコムースの匂いがいかに良い匂いであるか、小一時間かけて説教されていたでしょうね。
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