アンドロイド・ニューワールドⅡ
注文した料理を待っている間。

碧衣さんと紺奈局長のお二人が、お喋りをしている声が聞こえてきました。

「良いか、1110番。『Neo Sanctus Floralia』にいるときは、もう諦めたが。その他の場所に、ましてや傍に人間がいる時は、過剰なスキンシップを控える様にと、もう何度もいっ、」

「それにしても、瑠璃華さんいませんね。確か1年Aクラスって言ってましたよね?キッチンの方にでもいるんですかね」

「…それからお前は、人の話を聞くということを覚えろ」

と、紺奈局長は言っていましたが。

その言葉が、碧衣さんの耳に届いているとは思えません。

「何処行ったんでしょう、瑠璃華さん。折角来たから挨拶でもしようと思ったのに。彼女、何の仕事してるんですかね?」

と、碧衣さんは聞きました。

…。

…私だけが、お二人の会話を盗み聞きする訳にはいきませんね。

「私なら、空き教室でお金を数えていますよ」

と、私は言いました。

「え?…どうしたの?瑠璃華さん、いきなり…」

と、奏さんは驚いて顔を上げました。

私が突然話し出したから、びっくりしたのでしょう。

奏さんには、碧衣さんの声など聞こえていませんから。

難の脈絡もなく、突然話し出したように見えるのでしょうが。

しかし、碧衣さんには届いています。

勿論。彼も私と同じ、『新世界アンドロイド』ですから。

「あぁ成程。瑠璃華さんは、裏方仕事してるそうですよ」

「そうか」

と、碧衣さんと紺奈局長は言いました。

ほら。碧衣さんには、ちゃんと伝わっています。

こちらの声が、ちゃんと碧衣さんに届いているということは。

どうやら集音性能に関しては、第2局も第4局も、大体同じくらいのようですね。

折角来てくださったので、私としても挨拶の一つくらいはしたいのですが。

残念ながら、私も目の前の仕事があるので、行けません。

「私は顔を出せませんが、どうぞゆっくりしていってください」

と、私は言いました。

「えぇ、勿論。局長と、ゆっくりたっぷりのんびりしっぽり過ごします。ねー局長」

「…」

「うふふ。局長ったら照れて可愛いですね〜」

と、碧衣さんは言いました。

本当に、仲が良さそうで何よりですね。

「…瑠璃華さん、一人で喋ってるけど、大丈夫?」

と、奏さんは聞きました。

奏さんには碧衣さんの声が聞こえていないので、私が一人で話しているように見えるのでしょうね。

しかし。

「大丈夫です。ちょっと知り合いの知人、いえ、知り合いの知アンドロイドと会話していただけですから」

と、私は説明しました。

「そ、そう…」

「はい。それでは、計算を続けましょう」

と、私は言いました。
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