アンドロイド・ニューワールドⅡ
歩き始めてから、10分ほどして。

「それで、瑠璃華さんは…」

と、奏さんは言いました。

「はい、何でしょう」

「これから行く…えぇと、青薔薇学園だっけ」

「はい。私立青薔薇学園ですね。我々の通う星屑学園と同じ、私立の中高一貫校です」

「そう、そこ。場所は分かってるの?」

と、奏さんは尋ねました。

「行ったことある?」

「ありませんね。名前を聞いたことがあるだけです」

と、私は答えました。

碧衣さんが通っている学校として、名前だけは聞きましたが。

行ったことはありません。

が。

「場所は分かります。検索しましたから」

と、私は言いました。

「でも…俺達、本当に行って良いの?」

と、奏さんは不安げな面持ちで尋ねました。

行って良いの、というのは…。

「青薔薇学園に、ですか?」

「うん。俺達、他校の生徒なのに…。家族に知り合いがいる訳でもなく…。あ、まぁ…でも、瑠璃華さんには親戚の人がいるんだっけ」

と、奏さんは言いました。

親戚の人とは、誰のことでしょう。

そのような人はいません。

知アンドロイドならいますが。

「関係ない奴は来るな、って叩き出されなければ良いけど」

「碧衣さんは、別に他校の人間だろうが近所の人間だろうが、当日は誰にでも開かれているから、自由に来てもらって構わない、とのことです」

と、私は言いました。

従って、私達がお客として文化祭に参加しても、苦情が来ることはないはずです。

「そっか…。それなら良いんだけど…」

と、奏さんは言いました。

少しは、不安が取れたでしょうか?

「私達は昨日、自分の学校の文化祭は、思うように楽しめませんでしたから」

と、私は言いました。

「他校の文化祭に参加することで、せめて文化祭気分は楽しみましょう」

「うん…そうだね」

と、奏さんは少し微笑んで頷きました。
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