アンドロイド・ニューワールドⅡ
紺奈局長と別れてから。

私と奏さんは、改めて喫茶店に向かうことにしました。

「…何だか、瑠璃華さんのところも、結構複雑な家庭環境なんだね…」

と、奏さんは言いました。

先程の、一連の紺奈局長との会話を聞いて。

出てきた感想が、それですか。

そうだとしたら、酷い誤解です。

「そのようなことはありません。そもそも彼は、所属する局が違いますので」

「でも、家族みたいなものなんでしょう?」

「人間で例えるなら、そうかもしれません」

と、私は答えました。

「だとしたら、やっぱり大変だな…。あんまり人のことは言えないけど…」

と、奏さんは言いました。

そうですね。

厳密には家族はいない私よりも、本当の家族が存在する、奏さんの方が大変だと推測します。

「碧衣さんのああいった…問題行動は、今に始まったことではないので」

と、私は言いました。

本人が聞いたら、目を丸くするでしょうね。

本人は、それが問題行動だとは思っていませんから。

「ある意味で碧衣さんは、非常に一途なのです。これも、恋のもつれという奴ですね」

「そっか…恋のもつれ…。その点では、瑠璃華さんも結構もつれてるよね…」

と、奏さんはポツリと言いました。

はい?

「私の、何処がどうもつれているのですか?」

「え?そういうところ」

と、奏さんは笑顔で言いました。

…。

…どういうところですか?

「あ、ほら喫茶店に着いたよ。『カフェ・ブルーローズ』だって。校名にあやかってるのかな」

と、奏さんは喫茶店の看板を指差して言いました。

何だか、強引に話を変えられてしまったような気がします。

「ここはメイド喫茶じゃないよね。…席、空いてると良いね」

「…そうですね」

と、私は言いました。

何だか釈然としませんが、話を蒸し返して良いものかも分かりませんでした。

人間風に言うと、空気を読んだ、ということですね。

私も、少しは人間の感情を学べたでしょうか。

奏さんの意味深な台詞は、聞こえなかったことにして。

今は、目の前の文化祭を楽しむとしましょう。
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