アンドロイド・ニューワールドⅡ
『カフェ・ブルーローズ』に入った私達は、すぐにテーブルに案内されました。

席が空いていて良かったです。

お帰りなさいませ、とは迎えられませんでしたし。

生徒の店員さんも、制服の上に、各自エプロンをつけているだけでしたので。

やはり、ここはメイド喫茶の類ではないようですね。

何だか、ちょっと残念な気もしなくもないですが。

「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」

と、店員さんは言いながら。

さり気なく、テーブルに設置していた椅子をどかして、奏さんが座れるように場所を空けてくれました。

星屑学園でしたら、望むべくもない親切な対応ですね。

さすが、青薔薇学園の生徒は違いますね。

いっそ、眩しく思えてきます。

「こちら、メニューになります」

と、店員さんは言いながら、メニューを持ってきてくれました。

こちらも、画用紙で冊子を作っていた我がクラスとは違っていて。

メニューを書いた一枚の紙を、綺麗にラミネートしてあります。

「ご注文が決まりましたら、お声掛けください」

と、店員さんは言いました。

そして、にこやかな笑顔で一礼して、別のお客さんの接客に戻りました。

「メニュー、1ページ分しかないのですね」

と、私は言いました。

ラミネートされた、この一枚だけです。

片面はドリンクメニュー、その裏にフードメニューが載っています。

とてもシンプルです。

メニューの総数は、ドリンクを含めても、精々10種類程度でしょうか。

「普通は、これくらいだと思うよ。うちのクラスが欲張り過ぎだったんだよ」

と、奏さんは苦笑しながら言いました。

そうですね。

この『カフェ・ブルーローズ』は、メニューも絞っていて、余裕を持って商品を提供しているようで。

昨日の私達の喫茶店と違って、喫茶店とはおおよそそぐわない、忙しない雰囲気はまるでなく。

むしろ、ゆったりのんびりとした、和やかな空気です。

教室内に、低くクラシック音楽が流れているのも、ポイントの一つですね。

昨日の私達も、真似すれば良かったのですが。

もう過ぎたことを言っても、仕方ありませんね。

「さて、飲み物は何にします?」

と、私は聞きました。

奏さんは、先程かなり狼狽していらっしゃったので…。

「リラックス効果のある、ハーブティーは如何ですか?」

「あ、本当だハーブティー…。良いね、これにしよう。瑠璃華さんはどうする?」

「私は…そうですね、紅茶にしましょう。当店オリジナルブレンドだそうです」

と、私はメニューを見ながら言いました。

学生の喫茶店で、どうやってオリジナルブレンドに挑戦したのでしょう?

数種類のティーバッグを使っている、とかでしょうか。

興味深いですね。
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