アンドロイド・ニューワールドⅡ
「食べ物はどうします?」

「どうしよっか。割とさっき食べたばっかりだからなー…」

と、奏さんは言いました。

うさたんカレーのことですね。

「瑠璃華さんはどうする?」

「私はパンケーキにします。一枚から選べるそうですよ」

と、私は言いました。

メニュー表には、「パンケーキ 一枚300円からお好きなだけどうぞ!」と書いてあります。

お好きなだけ…100枚と言ったら、100枚焼いてくれるのでしょうか。

100枚目が焼ける頃には、最初の1枚目は、すっかり冷めていそうですね。

「1枚から選べる?じゃあ1枚だけ頼もうかな」

と、奏さんは言いました。

奏さんは消極的ですね。

それでは。

「済みません、注文をお願いします」

「はい、畏まりました」

と、店員さんはすぐにやって来ました。

近くで、さりげなく待機してくださっていたようですね。

「ハーブティーと、オリジナルブレンドティーをお願いします」

「畏まりました」

「それから、パンケーキを注文したいのですが」

「はい。パンケーキは、注文が入ってから一枚ずつ焼いているので、焼き時間が少々かかりますが、宜しいでしょうか?」

と、店員さんは聞いてきました。

成程、考えましたね。

あらかじめ、時間がかかることを先に伝えておくとは。

こうすれば、少々長く待たされても、「時間かかるって言ってたもんな」と納得することが出来ます。

昨日の私達も、この制度を導入すべきでしたね。

何度も言うように、今更言っても仕方ありませんが。

それはともかく。

「彼には1枚お願いします」

「はい。お客様はどうされますか?」

「一つ聞きたいのですが、この、『お好きな枚数をどうぞ』というのは」

と、私は店員さんに聞きました。

「はい」

「100枚くらい焼いてと頼んだら、100枚焼いてくれるのですか?」

「えっ」

と、店員さんは目を丸くしました。

何なら、奏さんもポカンとしていました。

「え、いや…それはその…。さすがに限度が…」

と、店員さんは狼狽えながら言いました。

限度?

「ちょ、瑠璃華さん!遠慮、遠慮をしようよ。食べ切れなかったらどうするの?」

と、奏さんは慌てて、私に聞きました。

「それは大丈夫です。私は『新世界アンドロイド』ですから。胃袋に限界というものはありません」

と、私は答えました。

人間でも、好きなものならいくらでも食べられる、と言いますしね。
 
久露花局長が、チョコレートであればいつまでも、いくらでも、際限なく、果てしなく食べ続けられるのと同じです。

アンドロイドである私なら、嫌いなものでも、いくらでも食べることが出来ます。

そもそも、『新世界アンドロイド』である私に、好き嫌いはありませんから。

「え、えぇと。ちょっと待っててください。キッチンに尋ねてきます」

と、店員さんは言いました。

そして、一端キッチンに戻り。

しばらくして、店員さんが小走りでやって来ました。

とても申し訳無さそうな顔をしているので、何となく返答は分かります。

「申し訳ありません、お客様。キッチンと相談してきたんですが、他のお客様もいらっしゃいますので、10枚が限度だという話になりまして…」

「成程、そうですか」

「申し訳ないのですが、10枚以内にして頂けますでしょうか」

と、店員さんは、とても申し訳無さそうに言いました。

そんな風に言われたら、これ以上我儘は言えませんね。

「分かりました。では10枚でお願いします」

「畏まりました」

と、店員さんは言いました。

「…本当に10枚…。キッチンの人、大変だろうなぁ…」

と、奏さんは遠い目をして言いました。
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