アンドロイド・ニューワールドⅡ
「先生とは、誰のことですか?」

「担任の先生だよ。佐賀来先生。一週間休みますって、伝えたんじゃないの?」

「はい。伝えました」

と、私は答えました。

「これから一週間の間、不登校になる訳ですから。不登校になる前に、事前宣告した方が良いと判断し、私の口から伝えさせて頂きました」

「…生徒本人の口から、不登校宣言って。先生もたまげただろうな…」

「『はぁ?あなた何言ってるの?』と言われました」

「うん、だろうね」

と、奏さんは真顔で言いました。

奏さんが、真顔モードに入ってしまいました。

「一週間かけて、全身のメンテナンスとアンドロイドックを受けてくる、と説明したのですが、いまいち理解して頂けませんでした」

「…だろうね…」

「あれほど丁寧に説明したというのに…理解してもらえないなんて、失礼ながら、佐賀来教師は理解力が欠如していると言わざるを得ません」

「先生は、何も悪くないと思うけどね」

「最終的には、『もう勝手にすれば?』と匙を投げられました」

「…それは切ないけど、でも怒られて、引き留められるよりマシか…」

と、奏さんは言いました。

私もそう思ったので、それ以上は何も言いませんでした。

信じてもらえなくて、残念です。

私は、本当のことしか言っていないのですが。

「そっか…。瑠璃華さん、一週間もいないのか…」

と、奏さんはポツリと言いました。

…?

「はい、その予定ですが…。何か問題がありますか?」

「え、あ、いや…。問題って言うか…」

「…言うか?」

「ちょっと…いやかなり…寂しいなと思って…」

と、奏さんは言いました。

寂しい。

人間特有の感情ですね。

何故寂しくなるのか、私には理解出来ません。

これが永遠の惜別になるなら、寂しくなるのも理解出来ますが。

一週間後には戻ってくる、と分かっているのに、何故寂しがる必要があるのでしょう。

「私が一週間いないだけで、何故寂しいのですか?」

「それは、だって俺は瑠璃華さんがす…」

「す?」

と、私は聞き返しました。

…酢?巣?

「い、いやいやいや!何言わせるの!?」

と、奏さんは慌てて否定していました。

私は何も言っていません。

「と、ともかく!その…休んでる間のノートは、俺が取っておくよ。プリントはコピーしておくね」

と、奏さんは焦った様子で言いました。

何か気になることでもあったのでしょうか。

「分かりました。ありがとうございます」

「うん。里帰り…行ってらっしゃい」

「はい。折角なので、何かお土産を持って帰りますね」

「ありがとう。お土産は良いから、瑠璃華さんが元気で、早く帰ってきてくれる方が、俺は嬉しいよ」

「そうですか」

と、私は言いました。
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