アンドロイド・ニューワールドⅡ
花火大会会場に向かうと、まだ花火が打ち上がってもいないのに、かなりの人混みが出来ていました。

「皆さん、花火大会だからといって、かなり浮かれているようですね…。そういう浮かれた風潮は、良くないと思います」

「うん…。多分ここにいる皆が、瑠璃華さんに『お前が言うか!』って言うと思うよ」

「それに、色々と出店が出ているようですね。以前映画で観たことがあります」

と、私は言いました。

路上販売ですね。

「あ、瑠璃華さん、屋台は初めて?」

「屋台ですか?」

「うん、ああいう出店のこと」

「えぇ。初めてですね」

と、私は答えました。

そもそも、このようなお祭りにやって来ることが、初めてですから。

当然、屋台も初めてです。

独特な雰囲気と、独特な匂いがしますね。

何の匂いでしょう、これは。

色んな食べ物の匂いが、入り混じったかような、カオスな香りがします。

「色々あるよ。あ、ほら…。瑠璃華さんの好きな、焼きそばを売ってるお店もあるよ」

と、奏さんは屋台を指差しながら言いました。

「本当ですね。パンで挟んでいないのが残念です」

「そこ、重要なんだ…」

「奏さん、あれは何でしょう?」

と、私はとある屋台を指差して聞きました。

「え?あぁ…あれは射的だね」

「射的?」

「えぇと…狙撃みたいなものかな?」

「狙撃!」

「わっ、びっくりした」

と、奏さんは言いました。

それは失礼しました。

つい、奏さんの言葉に反応してしまいました。

「狙撃なら、私の得意分野です」

「そ、そうなの?」

「はい。あ、いえ。実は近接戦闘の方が得手ではありますが、狙撃もそれなりに訓練を積みました」

と、私は言いました。

「そ、そうなんだ…」

「はい。起動初期、ミサイルの着弾予測地点を誤って、局長の部屋を爆破したことがある、という話は以前したと思いますが」

「…それは、狙撃…得意とは言えないんじゃないの?」

「はい。ですから、あれから訓練を重ねました。最近では、狙いを外すことも滅多になくなっています」

と、私は言いました。

やはり得意分野ですね。

「是非挑戦してみたいですね。奏さん、お付き合い頂いても宜しいでしょうか」

「あ、うん。良いよ」

と、奏さんは言いました。

許可ありがとうございます。

私は奏さんの車椅子を押し、射的の屋台に向かいました。
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