アンドロイド・ニューワールドⅡ
「危うく喧嘩にはなりかけたけど、今回は上手く収まったんだし。二人には、それぞれ注意しておくだけで済ませれば良いんじゃないかな」

『…』

『…』

紺奈局長も橙乃局長も、二人共申し訳無さそうでいたたまれない。

「ましてや、琥珀ちゃんは明日から、いよいよ『人間交流プログラム』に参加するんだから。起きてしまったことを悔いるより、明日から彼女がどう変わっていくのかについて見ていこう」

『…それについては、心配は無用です』

すかさず、橙乃局長が言った。

心なしか、橙乃局長の目が輝いてるように…見えなくもない。

お互いモニター越しだから、若干のラグもある。

『2017番は、誰よりも『人間交流プログラム』にて成果をあげてみせるでしょう。局長として、私が請け負います』

きっぱり言い切れる、橙乃局長の自信よ。

口にはしないけども、成程、琥珀ちゃんがあれだけ負けず嫌いで自信家なのも、頷ける。

琥珀ちゃんは、間違いなく橙乃局長の造った『新世界アンドロイド』だよ。

『我々は、競争している訳ではない。『人間交流プログラム』は、そういう目的で作ったのではない』

競争心を燃やしているように見える橙乃局長に、紺奈局長が釘を刺すように言った。

その通り。

誰が一番成果をあげられるか、なんて問題じゃない。

三人共、それぞれ『人間交流プログラム』を通して、人間の感情を学べば良い。

誰が早くて誰が遅いかなんて、そんなことは二の次。

学ぶことが大事なんだ。

『勿論分かっています。これはただの報告に過ぎません。我が局の2017番には、人間の感情を学習する素養があります。ですから、お二人のご心配には及びません。それをお伝えしたかっただけです』

…。

…うーん。

その意気込みは、高く買うよ。

でもやっぱり、人によっては挑戦的に見えるよね。

それが、橙乃局長の良いところでもあるんだけど…。

だからこそ、碧衣君も、琥珀ちゃんの言動にキレたんだろうし。

『…そうか。成果を期待する』

紺奈局長は、碧衣君のように挑発には乗らず、淡々と返事。

君は偉いよ。

で、私が何て言うか、だけど…。

…皆、ちょっと肩の力抜いて、チョコレートでも食べよう?

…って、本音では言いたい。凄く言いたい。

三人の『新世界アンドロイド』達にも言いたい。

でも、残念ながらモニター越しでは、そういう訳にもいかないので。

「…程々にね。皆、無理せず程々に頑張ろう」

って、言っておいた。

紺奈局長と橙乃局長に、この言葉がどれだけ届くかは分からないけど…。
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