アンドロイド・ニューワールドⅡ
その翌日。昼休み。

「今朝もね…家…って言うか、施設を出たら、そこに琥珀さんが待ち構えてて…」

「…」

「俺を待ってなくて良いよ、って言ったんだけど、『友達だから一緒に登校する』の一点張りで…」

「…」

「結局、また二人で学校に来たよ…。色んな人に見られて、本当恥ずかしかった」

「…」

「…瑠璃華さん、聞いてる?」

「…えぇ、聞いてますよ」

と、私は答えました。
 
聞いていますとも。

聞きたくなくても、聞こえてきますからね。

「俺は、あの子をどう扱ったら良いのか、見当がつかないよ…」

と、奏さんは言うので。

「…堅豆腐になっては如何でしょう?」

と、私はアドバイスしました。

「…?豆腐…??」

と、奏さんが首を傾げた、そのとき。

「お邪魔します」

と、再び聞き慣れた声がして。

顔を上げると、そこには予想通り。

「うわっ、こ、琥珀さん…!」

「こんにちは。お昼を一緒に食べに来ました」

と、琥珀さんは言いました。

出ましたね。

今日も来るのではないかと、密かに思っていたら。本当に来ましたね。

彼女は、まず自分のクラスで友人を作ろうとは思わないのでしょうか。

…奏さんしか友人のいない、私が言えた義理ではありませんが。

「ま、また来たの…?」

「はい、また来ました。そして今日は、良いものを持ってきました」

と、琥珀さんは言いました。

…良いもの?

とは、一体何のことでしょう。

「こちらをどうぞ、奏先輩」

と、琥珀さんは紙袋を差し出しました。

「え、な、何?」

「お弁当を作ってきました」

と、琥珀さんは自信有りげに言いました。

…お弁当ですか?

私も、一時期作っていたことがありましたが…。

「な、何で?どうしたの?」

と、これには奏さんもびっくりしていました。

何なら、周囲でチラチラとこちらの様子を伺っていた、クラスメイトも目を丸くしています。

「奏先輩が、昨日市販の菓子パンを召し上がられていたので。毎日それでは栄養バランスが偏るのではないか、と思いまして」

「そ、それでお弁当作ってきたの?」

「はい、どうぞ召し上がってください」

「…」

と、奏さんはびっくりして、固まっていました。

堅豆腐になれば良いとは言いましたが、物理的に固まってくれとは言っていません。

奏さんに…奏さんに、お弁当…。それも手作りの…。

「いや…悪いよ、そんなの。受け取れない」

と、奏さんは言いました。

おっ。

堅豆腐のように毅然として断る、第一歩ですね。
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