アンドロイド・ニューワールドⅡ
「瑠璃華さん」

と、奏さんは私を呼びました。

「…何ですか」

「瑠璃華さんも食べてみてよ。たくさんあるから、俺一人じゃ食べ切れないし。折角だから皆で食べよう」

と、奏さんは言いました。

嫌です。

…と、思わず言ってしまいそうになりました。

何故でしょう?不明です。

琥珀さんのお弁当に、何か仕込まれているとでも錯覚したのでしょうか。

「奏先輩に作ってきたのですから、私は奏先輩に食べてもらいたいです」

と、琥珀さんは言いました。

しかし。

「ありがとう。でも俺一人じゃ食べ切れないよ、この量は。無駄にするのは勿体ないし、やっぱり皆で食べよう」

と、奏さんは言いました。

…私も食べるのですか。それ。

「む…仕方ありません。では、私も頂くとしましょう」

と、琥珀さんは言って、自分の作ってきたお重弁当を食べ始めました。

そして。

「ほら、瑠璃華さんも食べよう。凄く美味しいよ、これ」

と、奏さんに促され。

嫌です、と言いたいところを、ぐっと堪え。

「…分かりました。頂きます」

と、私は答えました。

一口食べてみたところ、確かに不味くはありませんでした。

不味かったら良かったのですが。

「手が込んでるなぁ…。よくこんなに作れたね」

「はい。食材の買い出しにも、時間をかけましたから」

「そうだと思うよ」

「使った食材は、全て最高級のものです。調味料一つにしても、国内有数の名産地から取り寄せました」

と、琥珀さんは胸を張って言いました。

成程、良い食材を使っているのですか。

なら、美味しいのは当たり前ですね。

元々の食材が良いのだから、多少料理が下手くそでも、それなりの味にはなります。

「そ、そうだったのか…。いや、もうそんな無理しなくて良いから。申し訳なくなるから。金輪際こんなお弁当作らなくて良いからね。今日だけだから」

と、奏さんは念押ししました。

そうですね。

このようなことは、今日限りにして欲しいものです。

金輪際、二度とないことを願います。

何故そう思うのかは、やはり分かりません。
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