アンドロイド・ニューワールドⅡ
私がスマートフォンを入手したのは、ごく最近のことです。

それなのに、琥珀さんはもう所持しているというのですか。

早過ぎやしませんか。

誰の方針でしょう。橙乃局長が買い与えたのでしょうか。

それとも琥珀さん本人が、『人間交流プログラム』に必要だと判断したのでしょうか。

どちらでも構いませんが、いつの間に奏さんのメールアドレスを知ったのでしょう。

「最初に、放課後に一緒に帰ったとき…。スマホ持ってるかって聞かれて、持ってるって答えたら、じゃあメルアド交換しようって言われて」

と、奏さんは答えました。

成程、そういうことでしたか。

琥珀さんは、手が早過ぎますね。

「よくメールを送ってくるんだよ、彼女…。寝る前には、おやすみメールを送ってくるし。朝にはおはようメールが届いてる」
 
と、奏さんは言いました。

そのようなことを、何故もっと早く言ってくださらなかったのですか。

そんなことまでしていたのですね、あのアンドロイド。

一体何がしたいのですか。

「そしたら、今度はこうやって…映画に誘われた」

「奏さんは、その誘いに乗ったのですね?」

「だって、もうチケット予約したって、事後報告だから…。一度予約しちゃったら、あれってもうキャンセル出来ないし。断ったら申し訳ないと思って…」

と、奏さんは言いました。

別に良いではありませんか。断っても。

琥珀さんが勝手に、チケット予約しただけなのですから。

「そんな訳だから…悪いけど、今日はバドミントン部は、なしにしてもらえる?」

「…」

と、私はしばし無言になりました。

胸の奥に、異物感があります。

「…?瑠璃華さん?」

「…いえ、何でもありません」

と、私は言いました。

「分かりました。また次回にしましょう」

「うん、ごめんね」

と、奏さんは申し訳無さそうに言いました。

…胸の奥の異物感が、どうにも不愉快で堪りませんでした。
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