アンドロイド・ニューワールドⅡ
それでも、今日の放課後は、奏さんは琥珀さんの誘いを断りました。
何故なら今日は、仮バドミントン部の日だからです。
たまには、こういう日がないと駄目ですね。
久し振りに、琥珀さんを交えずに時間を過ごせる、と。
思っていたのも、束の間でした。
私が奏さんの車椅子を押して、体育館に向かうと。
そこには。
「お待ちしておりました。奏先輩」
と、琥珀さんは言いました。
体育館に、待ち受けていたのです。
…出ましたね。
「ど、どうしたの…?こんなところに」
と、奏さんは驚いて聞きました。
私も、同じことを聞きたいです。
すると。
「奏先輩のクラスメイトに聞いたところ、奏先輩と瑠璃華さんは、週に何度か体育館の一角を借りて、バドミントンに励んでいるそうですね」
と、琥珀さんは言いました。
そのようなことまで、聞き込みしているのですか。
「そこで、私も参加してみようと思います」
と、琥珀さんは言いました。
片手には、バトミントンのラケット。
もう片方の手には、シャトルを持っています。
準備万端とでも言いたそうですね。
この、琥珀さんのあまりの執念としぶとさに。
「…」
と、奏さんは絶句していました。
…。
私も、言いたいことがあります。
「…琥珀さん」
と、私は言いました。
「何ですか?」
「あなたは、何故奏さんにばかり、つきまとうのですか?」
と、私は聞きました。
この二週間、ずっと聞きたかったことを。
とうとう、聞くことにしました。
人間で言うところの、堪忍袋の緒が切れた、という奴ですね。
でも、どうしても。
私が考案し、二人で始めた、この放課後の仮バドミントン部だけは。
いくら後輩アンドロイドと言えど、誰かに邪魔されたくはなかったのです。
それが、どういう感情から来る衝動なのかは、私には分かりませんが。
「つきまとう?見解の相違です。私はつきまとってなどいません」
と、琥珀さんはしゃあしゃあと言いました。
それこそ、見解の相違です。
「私は奏先輩の友人ですから。昼休みや放課後を、友人と過ごすことの、何が悪いのですか?」
「悪いとは言っていません」
「ならば、あなたに口出しをされる覚えはありません」
と、琥珀さんは言いました。
そうですね。琥珀さんの言う通りです。
琥珀さんの言うことの方が正しい。それは分かっています。
…しかし、今回はその正しさに、納得が出来ません。
「奏さんではなく、自分のクラスで、友人を作ってはどうですか?」
と、私は聞きました。
「あなたに口出しをされる覚えはないと、先程も言いました」
「奏さんに限らず、様々な人間と交流してこその『人間交流プログラム』ではないのですか」
「自分こそ、奏先輩以外に、一人の友人もいない癖に、何で私にそんなことが言えるんですか?」
と、琥珀さんは聞きました。
確かに、私にも奏さん以外の友人はいませんが。
それは、クラスメイト全員に話しかけて、全員に断られたからです。
琥珀さんも、まずは自分のクラスのクラスメイトに声をかけてみるべきではないでしようか。
「上級生だろうと、友達は友達です。友達は必ず、同じクラスでなければならない理由はありません」
「…」
…と、私は黙り込みました。
そうですね。
その通りだと、私も思います。
しかし、そうではないのです。
それだけでは納得出来ないものが、そこにはあります。
「そして奏先輩は、瑠璃華さんの友人であり、私の友人でもあります。私が私の友人と付き合うことに、何か問題がありますか?」
と、琥珀さんは聞きました。
とても、挑戦的な態度に見えます。
…。
…問題は、ありません。理屈の上では。
しかし、不満ならあります。
理由の分からない、理不尽で意味不明な不満なら。
そしてその不満が、私の中で正体不明の怒りに変わり。
口を使って、その怒りを琥珀さんにぶつけずにはいられませんでした。
「…琥珀さん。あなたは卑怯だと思います」
と、私は言いました。
何故なら今日は、仮バドミントン部の日だからです。
たまには、こういう日がないと駄目ですね。
久し振りに、琥珀さんを交えずに時間を過ごせる、と。
思っていたのも、束の間でした。
私が奏さんの車椅子を押して、体育館に向かうと。
そこには。
「お待ちしておりました。奏先輩」
と、琥珀さんは言いました。
体育館に、待ち受けていたのです。
…出ましたね。
「ど、どうしたの…?こんなところに」
と、奏さんは驚いて聞きました。
私も、同じことを聞きたいです。
すると。
「奏先輩のクラスメイトに聞いたところ、奏先輩と瑠璃華さんは、週に何度か体育館の一角を借りて、バドミントンに励んでいるそうですね」
と、琥珀さんは言いました。
そのようなことまで、聞き込みしているのですか。
「そこで、私も参加してみようと思います」
と、琥珀さんは言いました。
片手には、バトミントンのラケット。
もう片方の手には、シャトルを持っています。
準備万端とでも言いたそうですね。
この、琥珀さんのあまりの執念としぶとさに。
「…」
と、奏さんは絶句していました。
…。
私も、言いたいことがあります。
「…琥珀さん」
と、私は言いました。
「何ですか?」
「あなたは、何故奏さんにばかり、つきまとうのですか?」
と、私は聞きました。
この二週間、ずっと聞きたかったことを。
とうとう、聞くことにしました。
人間で言うところの、堪忍袋の緒が切れた、という奴ですね。
でも、どうしても。
私が考案し、二人で始めた、この放課後の仮バドミントン部だけは。
いくら後輩アンドロイドと言えど、誰かに邪魔されたくはなかったのです。
それが、どういう感情から来る衝動なのかは、私には分かりませんが。
「つきまとう?見解の相違です。私はつきまとってなどいません」
と、琥珀さんはしゃあしゃあと言いました。
それこそ、見解の相違です。
「私は奏先輩の友人ですから。昼休みや放課後を、友人と過ごすことの、何が悪いのですか?」
「悪いとは言っていません」
「ならば、あなたに口出しをされる覚えはありません」
と、琥珀さんは言いました。
そうですね。琥珀さんの言う通りです。
琥珀さんの言うことの方が正しい。それは分かっています。
…しかし、今回はその正しさに、納得が出来ません。
「奏さんではなく、自分のクラスで、友人を作ってはどうですか?」
と、私は聞きました。
「あなたに口出しをされる覚えはないと、先程も言いました」
「奏さんに限らず、様々な人間と交流してこその『人間交流プログラム』ではないのですか」
「自分こそ、奏先輩以外に、一人の友人もいない癖に、何で私にそんなことが言えるんですか?」
と、琥珀さんは聞きました。
確かに、私にも奏さん以外の友人はいませんが。
それは、クラスメイト全員に話しかけて、全員に断られたからです。
琥珀さんも、まずは自分のクラスのクラスメイトに声をかけてみるべきではないでしようか。
「上級生だろうと、友達は友達です。友達は必ず、同じクラスでなければならない理由はありません」
「…」
…と、私は黙り込みました。
そうですね。
その通りだと、私も思います。
しかし、そうではないのです。
それだけでは納得出来ないものが、そこにはあります。
「そして奏先輩は、瑠璃華さんの友人であり、私の友人でもあります。私が私の友人と付き合うことに、何か問題がありますか?」
と、琥珀さんは聞きました。
とても、挑戦的な態度に見えます。
…。
…問題は、ありません。理屈の上では。
しかし、不満ならあります。
理由の分からない、理不尽で意味不明な不満なら。
そしてその不満が、私の中で正体不明の怒りに変わり。
口を使って、その怒りを琥珀さんにぶつけずにはいられませんでした。
「…琥珀さん。あなたは卑怯だと思います」
と、私は言いました。