アンドロイド・ニューワールドⅡ

嫉妬…。

…嫉妬、ですか。

体感するのは初めてですが、言葉の意味としては知っています。

本で読みましたから。

それ故に。

「…それは、良くない感情なのでは？」

と、私は聞きました。

嫉妬というのは、良くない感情なのではないでしょうか。

嫉妬は、犯罪行為の根幹になり得る感情だと聞いています。

嫉妬に狂った人間が、相手を殺害したり、復讐に走ったりする本を、読んだことがありますから。

あれは、あながちフィクションとも言えません。

嫉妬という感情は、それだけのパワーを秘めています。

成程、私が琥珀さんに対して破壊衝動を覚えたのは、それが理由なのですね。

私が、琥珀さんに嫉妬しているから。

…。

…何故私が、琥珀さんに嫉妬しなければならないのですか？

とても醜い感情です。

『確かに、それは負の感情だから、あまり感じない方が良いだろうね』

と、局長は言いました。

やはりそうですよね。

しかし。

『でも、人間なら誰でも持ってる感情だ。人間なら誰しも、誰かに嫉妬するものだよ』

と、久露花局長は言いました。

…そうなのですか？

『嫉妬によって、誰かを傷つけることが悪であるだけで。嫉妬することそのものは、悪いことじゃない』

「…」

『それにほら、碧衣君も、よく他の人に嫉妬してるでしょ？紺奈局長が、他の人と喋ってたりすると』

と、久露花局長は言いました。

そう言われてみれば。

碧衣さんは、嫉妬の塊のようなアンドロイドですね。

つまり彼は、私よりもずっと早く、嫉妬という感情を学習していたということです。

さすがは、『人間交流プログラム』の先輩ですね。

『瑠璃華ちゃんは不愉快だろうけど、私は瑠璃華ちゃんが、人として当たり前の感情を学習してくれて、嬉しいよ』

『はい…私も、素晴らしい成果だと思います』

と、久露花局長と、朝比奈副局長は言いました。

…。

お二人に悪意がないことは、重々承知しておりますが。

私としては、この感情が非常に不快ですので。

二人に喜ばれても、ちっとも嬉しくないというのが本音です。

『人間交流プログラム』の成果としては上々なのでしょうが、私はこのような感情、知りたくありませんでした。