アンドロイド・ニューワールドⅡ
―――――――…瑠璃華ちゃんとの通信を終え。

私は、パソコンの前で唸った。

それはもう唸った。

「うーん…。…うーん…。…うーん」

「大丈夫ですか?久露花局長…」

と、翠ちゃんに心配されるほどには、盛大に唸ってる。

…うーん。

瑠璃華ちゃんが、新しい感情を…しかも。

嫉妬という、複雑な感情を覚えたのは、凄く良いことだと思う。

それは、素直に喜ぶべきことなんだろうけど。

しかし、その原因がなぁ。

碧衣君との喧嘩を止めた、その瑠璃華ちゃんが。

今度は、自分が琥珀ちゃんと喧嘩秒読み状態とは。

なんて皮肉なことだろう。

そもそも、条件付けのお陰で、アンドロイド同士は、滅多に喧嘩しないはずなんだけどなぁ。

おまけに、瑠璃華ちゃんは第4局の…私の影響もあって、平和主義思考だし。

それなのに、どうしてこんなことになっちゃったんだか。

瑠璃華ちゃんにとって、それだけあの奏君という子の存在が、大きなものになってるってことなんだろう。

「…それにしても、ずっと奏君の一方通行で、気の毒だと思ってたけど…」

「意外と…そうでもなかったんですね。奏さんにとっては、良かったのかな…」

うん、そうかも。

でも瑠璃華ちゃんにしてみれば、二人きりで平和だったところに、予想だにしていないライバルが現れて。

それで、あれだけ荒れちゃってる訳か。

うーん。やっぱり複雑。

「それはそれとして、琥珀ちゃんの暴走は止めないと」

家の前まで待ち伏せ云々とか、毎日のように手作り菓子云々は、さすがにやり過ぎだ。

瑠璃華ちゃんのみならず、周囲の、他のクラスメイトからも、多分顰蹙を買ってることだろう。

奏君に固執するあまり、自分のクラスメイトは蔑ろにしているだろうし…。

それは良くない。

「琥珀ちゃんは多分…って言うか間違いなく、瑠璃華ちゃんに対抗意識を燃やして、わざと奏君に近づいてるんだろうからね」

「…そう、だと思います、私も。初日から、あれだけ…啖呵を切ってましたし」

だよねぇ。

あわよくば、瑠璃華ちゃんから奏君を奪ってやろう、なんて魂胆もあるのかも。

そういうことを考えるのは、非常に人間的で、早くも琥珀ちゃんは、『人間交流プログラム』の効果が出ている…と。

言えなくもないし、それは良いことなんだろうけど。

でも、瑠璃華ちゃんとしては、琥珀ちゃんのせいで自分の友達を奪われるのは、堪ったものじゃないだろう。

従って。

「…よし。今から通信室に行って…橙乃局長と話してくるよ」

瑠璃華ちゃんとも約束したからね。

橙乃局長と、話をつけるって。
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