アンドロイド・ニューワールドⅡ
「大丈夫でしょうか?局長…」

翠ちゃんは、心配そうに私に尋ねた。

「何が?」

「いえ…だって、橙乃局長も、琥珀さんに負けず劣らずの、負けず嫌いな方ですから…」

むしろ橙乃局長が負けず嫌いだからこそ、琥珀ちゃんもあんな性格なんだと思うよ。

「我々に何を言われても、全く動じないかも」

そうだね。その可能性はある。

私が何を言っても、「本人の自主性に任せている」と橙乃局長に言われたら、それまで。

しかもこれって、ある種のクレームだもんな。

「お宅のところのアンドロイド、ちょっと調子に乗り過ぎだから。自重して」と言ってるようなもの。

そんな風に言われて、愉快な人はいない。

私だって逆の立場だったら、他局の局長からそんなクレームつけられたら、多分しょぼーんとするよ。

それと同じで、私からクレームをつけられたら、橙乃局長だって気を悪くすると思う。

…けど。

「まぁまぁ、何も喧嘩をしたい訳じゃないんだから」

お互い、憎々しい相手じゃないんだ。

局は違えど、同じ『Neo Sanctus Floralia』の仲間。

ライバルでも何でもない。お互いを蹴落とそうなんて意識は全くない。

雑談感覚で話せば良いのだ。

「橙乃局長だって、それは分かってるはずだよ。お互い『人間交流プログラム』を遂行するアンドロイドを持つ局長同士、意見交換をするだけ」

「…それは…」

「だから心配ない。早速、ちょっと話してくるよ」

私は翠ちゃんにそう言って、通信室に急いだ。
< 317 / 467 >

この作品をシェア

pagetop