アンドロイド・ニューワールドⅡ
さて、通信室にやって来て。

私は早速、第1局に繋いだ。

緊急だとか、急ぎだとは言わず、「ちょっと話せないかなー」くらいの感覚で呼び出してみたら。

『お待たせしました』

案外、すぐに対応してくれた。

有り難い。

「いやいや。ごめんね、いきなり呼び出しちゃって」

『いえ…。何か御用ですか?久露花局長』

…うーん。

いきなり本題をぶつけて、「お宅のところのアンドロイドが〜」とか言ったら。

それって、やっぱり角が立つよね。

ここは、それとな〜く、回りくどく外堀から埋めていく感じで…。

「ううん。いやね、やっぱりお互い、自分のところのアンドロイドを、『人間交流プログラム』に参加させてる訳だから、意見交換でも…」

『うちの2017番、琥珀について、物申したいことがあるのですね』

「…」

…外堀から埋めていく予定が。

他ならぬ橙乃局長によって、いきなりど真ん中まで引っ張り込まれた気分だよ。

そっか、駄目か。

やっぱり、いきなり本題に突入か…。角が立つなぁ。

でも、言い訳がましいことはしたくない。

仕方ないか。

「…うん、実は、そう」

『そうですか。遠慮なく仰ってください』

そう言われてもね。遠慮なくクレームをつけられるほど、私の肝は据わってないんだよ。

何だか申し訳なくなっちゃってね。

「…君も知ってるでしょ?琥珀ちゃんの動向は把握してるはずだ」

『はい』

「どうも琥珀ちゃんは、転入してきてからというもの、上級生の友達…それも、瑠璃華ちゃんの友達と、特別親しくしようとしてるらしい」

奏君のことだね。言わずもがな。

『そのようですね。緋村奏さんでしたか』

名前もご存知のようで。

それなら、話は早い。

「上級生と友達になるのが悪いこと、だとは言ってないよ。むしろ良いことだと思う。そもそも『新世界アンドロイド』に年齢はないんだから、上級生とか下級生とかは関係ない」

何なら、琥珀ちゃんは奏君のことを、先輩と呼んではいるけど。

むしろ、琥珀ちゃんの方が、奏君より遥かに年上だから。

先輩なんて関係ないよね。

「それに、琥珀ちゃんに友達が出来て、それは私も凄く嬉しいんだけどね」

『はい』

「でもそのせいで、うちの瑠璃華ちゃんは大荒れなんだよ。いきなりやって来た琥珀ちゃんに、奏君を奪われたみたいで」

うん。

やっぱり、考えれば考えるほど、それって人間的な感情で。

そんな感情を、瑠璃華ちゃんが抱いたってことは、凄く喜ばしいんだけど。

でも瑠璃華ちゃんにとっては、不愉快の極み、って奴なんだろう。きっと。

「それでね、物凄く…物凄く厚かましいお願いなんだけど」

と、私はついに、本題に入ることにした。

「琥珀ちゃんに、少し自重してもらうよう、橙乃局長から言ってもらえないかな?」

…あぁ。

言ってはみたものの、何だか凄い罪悪感だよ。
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