アンドロイド・ニューワールドⅡ
モニター越しの、橙乃局長の顔は。

至極真面目な顔で、何を考えてるのか分からない。

怒ってるのかなぁ…。気を悪くしてはいるだろうな…。

逆ギレされたらどうしよう…通信切除かな?

あー、ハラハラする。

私には、瑠璃華ちゃんみたいな度胸はないからね。

根っからの平和主義者だから。平和を愛してやまない者です。

平和とチョコレートが好きです。

すると。

『…実のところ、私もやり過ぎではないかと思っていました』

橙乃局長は、真面目な顔をしたままそう言った。

え?

「やり過ぎ?」

『はい。上級生の…しかも異性の相手に対して、毎日待ち伏せをしたり、お弁当やお菓子を作って持っていったり…』

うん。

『本人にそのつもりがないのは、百も承知ですが。しかし周囲の目から見れば、男の尻を追いかけ回しているようにしか見えないでしょう』

…うん。

言い方は、ちょっと身も蓋もないけど。

確かに、しつこいストーカーみたいにしか見えないもんね。瑠璃華ちゃんもそう言ってた。

しつこい油汚れみたいだって。

でも周囲の人から見たら、油汚れどころか。

フラレてもなお追いかけ続ける、ストーカー以外の何物にも見えないだろうね。

橙乃局長も、そこは分かっていたらしい。

『それに、上級生に友人を作るのは良いことだとして、しかしそれ以外のクラスメイトとの関わりが全くないのでは、『人間交流プログラム』に参加させた意味がない』

そう言われると、私としてはちょっと耳が痛い。

瑠璃華ちゃんも、基本的には奏君以外のクラスメイトとは、ほとんど関わりがないから。

でも橙乃局長の思いとしては、やはり碧衣君みたいに、誰を相手にしても上手く付き合っていけるスキルを、身につけさせたいのだろう。

でなきゃ、『人間交流プログラム』に参加させた意味がない。

不特定多数の人間と交流出来るところが、『人間交流プログラム』の強みなんだから。

現状、琥珀ちゃんはその強みを、全く活かせてない。

どころか、周囲にとって好奇の目に映るようなことばかりをして、むしろ周囲から浮いているんじゃないだろうか。

琥珀ちゃん美人だから。余計に目立つよね。何をしても。

『まだプログラムは始まったばかりだからと、大目に見ていましたが…。そこまで1027番の気分を害しているのなら、早めに手を打った方が良いようですね』

「えっと、それは…」

『分かりました。今日、この後にでも、琥珀に連絡を取ります』

とのこと。

あれ。何だか思った以上に話が早い。

もっと、拗れるかと思ってたんだけど。
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