アンドロイド・ニューワールドⅡ
――――――…久露花局長との、定期連絡の翌々日。

月曜日を迎えた私は、いつも通り学校に向かいました。

…あれから、私も色々考えましたが。

やはり、久露花局長が注意したところで、琥珀さんを止められるとは思えません。

ここは私が、琥珀さんと一対一で話し合うべきではないかと思います。

腹を割って話す、という奴です。

最早それしかないと思われます。

この休日の間、私は嫉妬という、難しい感情に苛まれ続けました。

このような複雑な感情を、学習出来たことは大きな成果なのでしょうが。

出来れば、このような不快な感情は、一生知らずに生きていたかったものです。

この感情から逃れるには、やはり現状を変えるしかありません。

その為に、琥珀さんと腹を割って話す必要があるのではないか、と思ったのです。

喧嘩腰ではなく、ちゃんと落ち着いて、冷静に話し合いする必要があります。

そこで私は、お互いに冷静に、腹を割って話が出来るように、と。

例の、チョコレートの匂いがするアロマオイルと。

腹を割って話す、つまり開腹する為の包丁を持って、登校しました。

これで、いつでも話し合いが可能ですね。





…と、覚悟を決めて登校したのですが。




「…え?週に一度?」

「うん。これからはそうするって」

と、奏さんは困惑したように言いました。

何だか、私の予想外の展開になっているようです。

朝、いつも通り登校してきた奏さんから、その話を聞かされました。

どうも今朝、また施設の前に琥珀さんが潜伏、もとい。

待ち伏せしていた琥珀さんから、聞かされたそうです。

何を思ったか、琥珀さんはこう言ったそうです。

「今日から、一緒に登下校するのは月曜日だけにします」と。

一体、どういう風の吹き回しでしょうか。

更に、こうも言ったそうです。

「昼休みに、奏先輩の教室に行くのも、週に一度だけにします」と。

いきなり、あまりの変わり身の早さに驚きます。

突然、新しい遺伝子が生まれたのでしょうか。

まさか、琥珀さんの影武者が現れたともしれません。

恐ろしいです。

「いきなりどうしたのでしょう、琥珀さん…」

「さぁ…。週末も、これまでは散々遊びに誘われてたんだけど、この週末はさっぱりだったし」

と、奏さんは言いました。

そうだったのですか。

それは良かったです。

「何だろう。何かあったのかな…。…いや、今までがおかしかったんだけど」

と、奏さんは言いました。

考えられる可能性は、間違いなく…金曜日に行った、あの定期連絡ですね。

久露花局長が、橙乃局長に意見してくださったのでしょう。

その結果、橙乃局長から、琥珀さんに某か伝えたのでしょう。

そうして、琥珀さんが改心した…と考えるのが妥当です。

一応琥珀さんも、局長から言われたことは聞くのですね。

むしろ、橙乃局長の言うこと以外は、まともに聞かなそうです。

「そうですか…。良いことですが、私としては折角包丁を持ってきていたので、腹を割って話したかったものです」

「え?ちょ、瑠璃華さん何て?」

「いえ、何も」

と、私は言いました。

どうやら出番がなさそうなので、包丁は鞄の中にしまっておくことにしましょう。
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