アンドロイド・ニューワールドⅡ
翌日。

私は早速、奏さんにも、声をかけてみることにしました。

もう一人の了解は取り付けたのに、奏さんに拒否されたら、全て水の泡ですね。

そのときは、悲しく二人で、アンドロイド同士聖夜を過ごすことにしましょう。

「奏さん、実は提案があるのですが」

「え?どうしたの藪から棒に」

と、奏さんは言いました。

「昨日、クリスマスの話をしましたよね?」

「え?あぁ、うん、したね。瑠璃華さんの家で、毎年クリスマスのお菓子パーティーを開いてるって」

と、奏さんは言いました。

覚えているのは、そこですか。

余程、第4局の恒例行事が印象的だったようです。

今度、久露花局長に伝えておきます。

「そのような話もしましたが、クリスマス会の話もしましたよね」

「あ、俺の暮らしてる施設の?」

「はい。奏さんが毎年、松ぼっくりの亜種になっているという話です」

「…俺、そんな話したっけ?」

と、奏さんは首を傾げました。

どうやら、忘れてしまったようですね。

仕方ありません。人間の記憶力は、不完全なものですから。

久露花局長もよく、「あれ?今の何処やったっけ!?」などと言いながら、つい30秒ほど前に使っていたボールペンを探していることがあります。

それなのに、チョコレートの在処だけは、あれほど種類がありながら完璧に覚えているのですから。

やはり人間の記憶力は、アンドロイドに比べて、不完全であると言わざるを得ません。

それはともかく。

「私達も、クリスマス会を開いてみてはどうでしょう、と思いまして。奏さんをお誘いするつもりなのです」

と、私は言いました。

「え?」

「琥珀さんと私で、相談しました。折角ですから、皆でクリスマス会を開かないか、と」

と、私は言いました。

思いついたのは私で、次に琥珀さんを誘うと、「良い考えだと思います」との返事を受け取りました。

「会場は、琥珀さんの家を貸してくれるそうです。どうでしょう。奏さん」

「く、クリスマス会…?俺と、瑠璃華さんと…琥珀さんで?」

「はい。どうですか?」

「…」

と、奏さんはポカンとして、私を見つめていました。

無言ですね。

それは否定の意ですか?

だとしたら、ちょっとショックです。折角考えてきたので。

「あ、そういう…。折角なら、俺は瑠璃華さんと二人きりで何処かに…あ、いやでも…瑠璃華さんから誘ってくれたんだから、セーフか…?何もないクリぼっちよりはマシなのか…?」

と、奏さんは意味不明なことを呟いていました。

…何を言っているのでしょう。

またクリぼっち、なる謎の言葉を口にしましたね。

もしかして、松ぼっくりとは違う意味なのでしょうか?

「…駄目ですか?」

と、私は聞きました。

もし駄目なのなら、仕方ありません。

そのときは、琥珀さんと二人でクリスマス会を開きましょう。

すると。

「いや、駄目じゃない、駄目じゃないよ。クリスマス会、行く。行くよ」

と、奏さんは答えました。

そうですか。それは良かったです。

「誘ってくれてありがとう、瑠璃華さん」

「いいえ、こちらこそ。楽しいクリスマスにしましょう」

と、私は言いました。

今から、クリスマスが待ち遠しいですね。
< 329 / 467 >

この作品をシェア

pagetop