アンドロイド・ニューワールドⅡ
碧衣さんも碧衣さんで、少しでも紺奈局長が絡むと、頑固者を通り越して危険人物と化すので。

未だに、琥珀さんとの一件を引き摺っているかと思ったのですが。

意外と、そうでもなかったのかもしれません。

「…本当に良いのですか?」

と、私は聞きました。

あまりにあっさり快諾されたので、ついそう聞きたくなりました。

『え?良いですけど…。僕、行かない方が良いんですか?』

「いえ、そのようなことはありません。来てくださるなら、有り難いです」

と、私は電話の向こうの碧衣さんに言いました。

対面でないので、今碧衣さんがどのような顔をしているのか、見られないのがもどかしいですね。

比較的明るい声で話しているように聞こえますが、実は顔を見てみると、物凄く不機嫌だったりするかもしれません。

これが電話の恐ろしいところですね。話している相手の顔が見られない。

「しかし、碧衣さんは前回、琥珀さんとかなり揉めていらっしゃったので」

『あぁ、はいそうですね』

「琥珀さんが来るなら行かない、と仰るのではないかと思ったのです」

と、私は率直に言いました。

琥珀さんですら、碧衣さんが来ることに気が進まない様子でしたから。

碧衣さんは、もっと嫌がるかと思ったのです。

すると。

『実はあの後僕、紺奈局長に怒られまして』

と、碧衣さんは言いました。

そうなのですか。

『アンドロイド同士で喧嘩をするな、と口を酸っぱくして言われたんですよ。これって愛の危機じゃないですか?僕だって、好きな人を困らせたくはありません』

と、碧衣さんは言いました。

あれ?じゃあ碧衣さんがクリスマス会に参加する、と言ったのは。

もしかして。

『そこで!琥珀さんも参加するクリスマス会とやらに、僕も参加することで、琥珀さんと仲直りしたと、紺奈局長に報告します。きっと局長、喜んでくれますよね!』

と、碧衣さんは電話越しでも分かる、弾んだ声で言いました。

成程、やはりそういうことですか。

碧衣さんは、変わらず碧衣さんでしたね。

結局彼の行動原理は、常に紺奈局長にあるという訳です。

むしろ安心しました。

「分かりました。碧衣さんからも了承を得られたと、他の二人にも伝えておきます」

と、私は言いました。

すると。

『あ、ちょっと待って下さい。まだ参加出来るか分からないんですよ』

と、碧衣さんが私を引き留めました。

…?

「参加出来ない?どういうことですか?」

と、私は聞き返しました。

たった今、参加希望だと仰ったばかりでは?
< 334 / 467 >

この作品をシェア

pagetop