アンドロイド・ニューワールドⅡ
「グソクムシ…グソクムシかぁ…。瑠璃華さんだなぁ。実に瑠璃華さんなプレゼントだよ…」

と、奏さんは天を仰いで言いました。

どういう意味でしょう。

きっと、喜んでくれているのでしょうね。

「クリスマス会のプレゼント交換で、偶然好きな子のプレゼントが回ってきて…これは胸熱展開だと思ってたら…」

「…」

「しかも中身は抱き枕。凄く胸の高鳴る展開なのに…それなのに…中身がグソクムシとは…」

「…」

「運命の女神が半笑いだよ」

と、奏さんは真顔で言いました。

…先程から、何を一人でぶつぶつ喋っていらっしゃるのでしょう。

もしかして、奏さん…。

「…グソクムシ、嫌でしたか?」

と、私は聞きました。

私は素晴らしいプレゼントを用意したつもりだったのですが。

もしかして、奏さんのお眼鏡には適わなかったのでしょうか?

だとしたら、とても切ないです。

しかし。

「え?いやそんなことはない!凄くうれっ…うれ…?…嬉しいよ!瑠璃華さんからのプレゼントなんだから、俺は何でも嬉しいよ!」

と、奏さんは言いました。

「そうですか。それは安心しました」

と、私は言いました。

きっと奏さんは、グソクムシがあまりにも嬉しくて、言葉をなくしていたのでしょうね。

そんなに喜んでもらえるなんて、時間をかけて選んだ甲斐がありました。

「それ、色々種類があったんですよ」

「え、そうなの?…あぁ、まぁ瑠璃華さんの大好きな、深海魚シリーズだもんね。…一応聞いておくけど、他にはどんな抱き枕があったの?」

と、奏さんは聞きました。

「そうですね。まずはラブカ」

「うわぁ。聞き覚え…」

「ミツクリザメ」

「それも既視感」

「タカアシガニ」

「それのキーホルダー、俺の部屋にまだあるよ」

「あとはクリオネ」

「何でそれにしてくれなかったの?」

「しかしつまらなかったので、やはりグソクムシにしました」

「…どういう判断基準…」

と、奏さんは呟きました。

「様々な選択肢の中から選ばれた、よりすぐりのグソクムシです。どうか、大事にしてください」

「う、うん、ありがとう…。瑠璃華さんからのプレゼントだからね、何でも大事にするよ…」

と、奏さんは言いました。

喜んでくださったようで、何よりです。
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