アンドロイド・ニューワールドⅡ
そうこうしているうちに。

琥珀さんは、プレゼントの包装紙を開けていました。

「これは…」

「膝掛けと…目覚まし時計だよ」

と、奏さんは言いました。

中から出てきたのは、赤いチェック模様の、ふかふかとした膝掛けと。

手のひらに乗るほどの、洒落たデザインの目覚まし時計でした。

…ふむ、成程。

これが、奏さんのセンスなのですね。

「どうかな?」

と、奏さんは聞きました。

自分のプレゼントのセンスを、評価して欲しいようです。

「…何だか掴みどころがなくて、つまんないですね」

と、碧衣さんはズバリと言いました。

身も蓋もありませんね。

碧衣さんはそういう方です。

「うっ。そ、それは…うん。自分でも、かなり無難なところに逃げたな、っていう自覚は、ある…」

と、奏さんは気を悪くすることもなく、もごもごとそう言いました。

無難?

これは、無難なプレゼントなのですか?

確かに碧衣さんの言う通り、掴みどころはありませんね。

どういうコメントをしたら良いのか、反応に困ります。

それが無難ということなのでしょうか。

「でも、こういうプレゼント交換のときのプレゼントって、誰が受け取っても、喜んでもらえるものを選ぶことが大事だと思って」

と、奏さんは言いました。

その意見は、全面的に賛成です。

「はい、私もその意見に賛成です、奏さん」

「そっか。まさか、瑠璃華さんに賛成されるとは思ってなかったよ」

と、奏さんは笑顔で言いました。

…?

私、何か変なことを言いましたか?

「私は奏先輩からのプレゼントなら、何でも嬉しいです」

と、琥珀さんは言いました。

「ありがとう。お世辞じゃないかって心配になるけど」

「大事に使います」

「うん、そうしてくれるとうれし、」

「大事に…鍋敷きにします」

「やっぱり嬉しくないの!?ごめんね!無難なところに逃げて!」

と、奏さんは叫びました。

鍋敷きには、されたくなかったのでしょうか。

「?分厚くてふかふかしていますから、鍋敷きには最適だと思っただけですが」

と、琥珀さんが言うと。

「あ、そ、そういうこと…。…何だか君達アンドロイドの言うことって、冗談なのか本気なのか分からないから、時に物凄く焦るよ」

と、奏さんは言いました。

それは心外ですね。いえ、私に心はありませんが。

「私達は、いつだって本気で、真面目です。ねぇ、琥珀さん」

「はい。私もいつでも真面目です。ふざけたりはしません」

「僕は、たまにふざけますけどね。しかし紺奈局長への思いは、いつだって本気です」

と、私と琥珀さんと碧衣さんは言いました。

碧衣さんだけ、ちょっと異質ですが。

碧衣さんはそういう方です。

「そういうところ…。そういうところなんだよ…」

と、奏さんはポツリと呟きました。

そういうところ?

…って、どういうところですか?

理解不能です。

「ともかく、プレゼントありがとうございます。大事にします」

と、琥珀さんは言いました。

「うん、そうしてくれると嬉しいよ。あと、鍋敷きはやめて欲しい」

「分かりました。ではそれ以外の用途を考案して、使いますね」

「…膝掛けなんだから、膝に掛ける以外の用途はないでしょ…」

と、奏さんは呟いていました。
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