アンドロイド・ニューワールドⅡ
こうしていると、奏さんの体温が伝わってきます。

「…」

と、奏さんは無言でした。

時が止まったように、固まっています。

大丈夫でしょうか。

何か面白いものでも見えたのでしょうか。

「…どうかしましたか?奏さん」

と、私は尋ねました。

すると。

「…どうかしてるのは、瑠璃華さんでしょ」

と、奏さんはかろうじて、声を絞り出しました。

声が掠れていますが、大丈夫でしょうか。

やはり風邪ですか?

「何がですか?」

「い、いきなり何してるの?」

「いえ、こうすると体温が分かるのでしょう?」

と、私は聞きました。

人間が相手の体温を確かめるときは、こうするものだと、以前観た映画でやっていました。

それを実践してみただけです。

まぁ、初めての試みなのですが。

「そ、それなら…手を当てるだけでも充分でしょ。い、いや。それもちょっと問題だとは思うけど…」

「…?」

「…きょとんとしちゃってさぁ…」

と、奏さんはがっくりと言いました。

…どうしたのでしょう。

先程から、奏さんが百面相です。

「触診の結果、熱はなさそうですね。それは安心しました」

「…熱はないよ…」

「ですが、体調は優れないのでは?先程から顔が赤くなったり、固まって一時フリーズしたりと、挙動不審ですよ」

「…それは瑠璃華さんのせいだよ…」

と、奏さんは言いました。

え、私?

私が、一体何をしたと言うのでしょう?

「私、何かしましたか?」

「…無意識なんだもんな。本当に君は…タチが悪いよ」

と、奏さんは苦笑いで言いました。

そうですか。

「それは申し訳ありません」

「ううん、良いよ…。俺は瑠璃華さんの、そういうところも…」

「?そういうところも?」

「…嫌いじゃないよ」

と、奏さんは顔を背けて言いました。

ちゃんと、こちらを見て話してください。

何か疚しいことでもあるのでしょうか。

「…そ、それで。さっきの誘いだけど」

と、奏さんは強引に話をすり替えました。

「はい?」

「明日、出掛けようって話…」

と、奏さんは言いました。

あぁ。

先程、誘ってくださいましたね。

「何処に出掛けるのですか?」

「えっと…もし付き合ってくれるなら…駅前で、クリスマス限定のイルミネーションをやってるから、それを一緒に見に行けたら…」

と、奏さんは言いました。

成程、イルミネーションですか。

知ってますよ。電極をくっつけて、ピカピカ光らせる、電気代のかかりそうな装飾ですよね。

実物を見たことはありませんが、映画で観たことがあります。

「良いですよ」

と、私は言いました。
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