アンドロイド・ニューワールドⅡ
顔を上げると、そこにいたのは。

「あら、碧衣さんじゃないですか」

「どうも」

と、碧衣さんは会釈しました。

昨日会ったばかりの碧衣さんに、今日も会いました。

しかも、今日の碧衣さんは、お一人ではありません。

碧衣さんの隣に、清楚な白いコートを着た、髪の長い女性が立っていました。

「そちらの方は…」

「あ、はい。僕の彼女です」

と、碧衣さんは言いました。

やはりそうでしたか。

今日は彼女と出掛けると仰っていましたしね。

出掛け先は、ここだったのですか。

皆さん、考えることは同じですね。

「…今、めちゃくちゃ良いところだったのに…。どうしてくれるんだ、この空気…」

と、奏さんはポツリと呟いていました。

良いところ?何がですか?

空気はひんやりしていますよ。12月ですからね。

「碧衣君、こちらの方々は?」

と、碧衣さんの彼女は聞きました。

名前を君付けで呼んでいるのですか。

「彼女は僕の従兄妹です。従兄妹と、その友人ですね」

と、碧衣さんは彼女に教えていました。

「あ、従兄妹さんだったんだ。どうも、こんばんは」

と、碧衣さんの彼女は言いながら、私にお辞儀しました。

「これはどうも、ご丁寧に」

「碧衣君…碧衣さんには、いつもお世話になってます」

「はい。私も碧衣さんにはお世話になってます。お互い様ですね」

と、私は言いました。

すると、碧衣さんの彼女は、困ったような顔で。

「えぇっと…」

と、碧衣さんの彼女は言いました。

私、何か変なことを言いましたか?

「済みません、僕の従兄妹、ちょっと変わった人でして」

と、碧衣さんは笑顔で言いました。

私は人ではなく、アンドロイドなのですが。

何なら、碧衣さんもアンドロイドなのですが。

碧衣さんは、自分が『新世界アンドロイド』であると、彼女に伝えているのでしょうか?

「悪意はないですし、悪い方でもないので。気にしないでください」

「そ、そうなんだ…」

と、碧衣さんと碧衣さんの彼女は言いました。

どういう意味でしょうか。

「瑠璃華さん達も、イルミネーション見に来てたんですね」

と、碧衣さんは言いました。

「はい。奏さんに誘われまして」

「そうだったんですか。それじゃあ、お邪魔しちゃ悪いですね」

と、碧衣さんは笑顔で言いました。

…何の邪魔ですか?

碧衣さんも、碧衣さんの彼女も、何も邪魔していませんよ。

「そうね、邪魔しちゃ悪いわね」

「行きましょうか。そろそろ、レストランの予約の時間ですし」

「あ、本当」

と、碧衣さんと碧衣さんの彼女は言いました。

レストランの予約ですか。それは本格的ですね。

そこまで準備しているとは、さすが碧衣さんです。
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