アンドロイド・ニューワールドⅡ
一通り、イルミネーションを見て。

「これからどうします?奏さん」

「そうだな…。冷えてきたし、ぼちぼち歩きながら帰ろうか」

と、奏さんは言いました。

分かりました。では、ゆっくり帰るとしましょう。

「…クリスマスにこんなこと聞くのもなんだけど」

と、奏さんは切り出しました。

「はい、何でしょう」

「瑠璃華さん、お正月はどうするの?局長さんのところに帰省するの?」

と、奏さんは尋ねました。

お正月ですか。

そういえば、クリスマスが終わったら、数日後には年明けですね。

何だか長かったような、一方で短かったような気もします。

実りのある一年だったとは思います。

色々な発見がありましたしね。

たくさんの、人間の感情も学びました。

これは大事なことです。

「特に帰省の予定はありませんね」

と、私は答えました。

つい先月、メンテナンスの為に帰ったばかりですし。

「お父さん、局長さん悲しまない?」

「大丈夫だと思います。大抵正月はあの方、お汁粉を啜って終わりますから」

「…ブレないなぁ…」

と、奏さんは言いました。

「奏さんは、お正月は何かするのですか?」

「特に何も…。予定はないけど…」

と、奏さんはもごもごと言いました。



「もし瑠璃華さんに、予定がないなら…」

「はい」

「良かったら、元旦に一緒に、初詣行かない?」

と、奏さんは提案しました。

初詣。

知ってますよ。新年初に、神社に参る人間のイベントですね。

一度も行ったことはありませんが、知識としては知っています。

以前、本で読んだことがありますから。

しかし、あれは宗教行事ですよね。

奏さんは、神道の方なのでしょうか。

あれ?でも、クリスマスも祝ってましたよね。

宗教上、大丈夫なのでしょうか。

「私は構いませんけど…」

「…けど?」

「奏さん、宗教は大丈夫なのですか?クリスマスを祝って、神社にも参るとは」

「あぁ、大丈夫大丈夫。そういうことを気にする民族性じゃないから」

と、奏さんは答えました。

そうですか。

「それに…。何処に行くかは問題じゃないんだよ。俺にとっては…瑠璃華さんと出掛けることが大事なのであって…」

「…?」

「何だかんだ、今日の渾身の告白も、スルーされちゃってるしなぁ…」

と、奏さんはまたしても、ぶつぶつ言っています。

今日は、奏さんの小声でぶつぶつが冴えますね。

「よく分かりませんが、私も奏さんとお出掛けするのは好きですよ」

と、私は言いました。

「そ、そう?」

「はい。だって私達、親友ですからね」

と、私は胸を張って言いました。

…しかし。

「…クリスマスに一緒に出掛けて、渾身の告白して、これだもんなー…。聖夜の力は、瑠璃華さんには通じなかったってことか…」

と、奏さんは遠い目で呟きました。

何ですか、聖夜の力って。

「でも、瑠璃華さんにクリスマスプレゼント渡せたから、俺は満足だよ」

「そうですか。それは良かったです」

「うん」

と、奏さんは笑顔で頷きました。
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