アンドロイド・ニューワールドⅡ
さて、そろそろお参りの順番が回ってきますね。

皆さんガラガラと鈴を鳴らしては、手を叩いてお辞儀しています。

何をお祈りしているのでしょうね。

しかし初詣とは、元来神様に新年の挨拶をし、一年を無事に過ごせたことを感謝する為のものであり。

一方的に、あれこれお願い事をする行為ではないはずなのですが。

何だかんだ、皆さんお願い事をしているようです。

手を合わせながら、ぶつぶつと祈っている声が聞こえてきます。

「○○大学に合格出来ますように」とか。

「もっとピアノが上手くなりますように」とか。

「宝くじが当たりますように」とか。

皆さん、意外と欲深いですね。

神様も、一日でこれだけの人間の数のお願い事を、一つずつ捌かなければならないのですから、大変ですね。

私は神様でなくて良かったです。アンドロイド万歳です。

では、私達もお参りをしましょう。

鈴をガラガラと鳴らし、奏さんと並んで、手を合わせました。

「瑠璃華さんが…今年はちゃんと、俺の気持ちに気づいてくれますように…」

と、奏さんは、とても小さな声で呟きました。

聞くつもりはなかったのですが、『新世界アンドロイド』の集音性能の高さ故に、聞こえてしまいました。

それが奏さんの願い事なのですか。

奏さんのお気持ちに気づく…?

私、いつも気づいていなかったのでしょうか?

それは申し訳ないことをしました。

もっと、奏さんの気持ちを察して行動せよ、ということですね。

理解しました。

では出来るだけ、そのように動きましょう。

と言うか、それは神に祈らなくても、私に頼めば叶うことなのでは?

わざわざ神に願うことでしょうか。

ともかく、私が気をつけさえすれば、それで奏さんの願い事は叶いますね。

一方、私の願い事は何でしょう。

自分の力で叶えるのではなく、わざわざ神に頼むくらいですから。

どうせなら、神でしか叶えられないような、そんな壮大な夢が良いですね。

では。

「神よ…あなたの力を私に与え、私に神を超越する力をください」

「ぶはっ」

と、隣で聞いていた奏さんが噴き出しました。
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