アンドロイド・ニューワールドⅡ
第15章〜Ⅲ〜
…その翌日のこと。

私は、いつもより早めに登校しました。

大きな意味はありません。 

ただ、正気に戻っただけです。

あれだけ放心状態だった私は、ようやく自我を取り戻しました。

私は大したことはしていません。ただ、自分の思いを正直に、素直に伝えただけです。

その結果、奏さんを困らせることになって、申し訳ないのですが。

それなのに何故こうも、私の気持ちは晴れやかなのでしょう。

もう後悔することはないと、分かっているからでしょうか。

でもその為に、奏さんを困らせることになって、本当に申し訳ないです。

あのようなことを言われたら、気持ち良く転校することが出来ませんよね。

だから。

私は、残りの一学期間をかけ。

奏さんが、心置きなく転校出来るよう、最大限サポートするつもりです。

後ろ髪を引かれるような思いを、これ以上して欲しくはありませんからね。

次の学校で、奏さんに優しくしてくださる方が、たくさん見つかりますように。

私のことなど忘れるほどに、楽しい毎日を送ることが出来ますように。

そう願うばかりです。

…すると。

「…おはよう。今日早いんだね、瑠璃華さん」

と、登校してきた奏さんは言いました。

「…おはようございます。奏さんこそ、今朝は早いのですね」

と、私は言いました。

教室の中は、誰もいませんよ。

部活の朝練等がある方は、登校しておられますが。

彼らは朝練中なので、皆さん、運動場を駆け回っているか、体育館にいます。

朝練もないのに、このように早く登校しているのは…私と奏さんくらいのものです。

私は正気に戻ったので、早めに登校しただけですが。

奏さんは、何故こうも早くにいらっしゃったのでしょう。

「何か用事がありましたか?」

と、私は尋ねました。

小テストの勉強をしたいから、とか。教師と何か約束があるから、とか。

すると。

「うん、用事があったから、早く来たんだ」

と、奏さんは答えました。

そうでしたか。

「何の用事ですか?」

「瑠璃華さんに、伝えたいことがあって」

と、奏さんは言いました。

…私に?

「その為に、早く来たのですか?」

「うん」

「…それならそうと、言ってくだされば良かったのに。今日は、私も偶然早くに来ただけで…」

「そうだね。でも、瑠璃華さんも俺と同じ気持ちだって分かったから…。きっと瑠璃華さんも、早く登校してくれてるだろうな、と思って」

と、奏さんは言いました。

なんと。

奏さんは、私の行動パターンを推測したのですか。

奏さん、あなた分析官になれるのでは?
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