アンドロイド・ニューワールドⅡ
翌日。

「おはよう、瑠璃華さん」

「おはようございます、奏さん」

と、私と奏さんは、いつもの朝の挨拶を交わしました。

いつも通りの日常とは、それだけで尊く、愛すべきものですね。

「昨夜は大丈夫でしたか。怒られました?」

「ちょっとね。小言言われた。でも、それだけだったよ」

と、奏さんは苦笑いしながら言いました。

そうですか。

もし、まだ施設の職員が怒っているようでしたら。

私が自ら出向いて、人間の怒りを鎮める魔法の言葉、「どうどう」を言ってこなくてはならないかと思ったのですが。

どうやら、その必要はなかったようです。

安心しました。

「それでさ、瑠璃華さん」

と、奏さんは切り出しました。

「はい、何ですか?」

「図らずも俺、昨日瑠璃華さんと、綺麗な夜景を見ることが出来た訳なんだけど…」

「そうですね」

「あのときは、心臓バックバクだったから気づかなかったけど、帰ってから気づいたよ。…あれって、絶好のチャンスだったのにって」

と、奏さんは神妙な顔をして言いました。

…チャンス?

一体何のチャンスでしょう。

「めちゃくちゃ後悔したんだけど、過ぎてしまったのは仕方ない。だから改めて…改めて、言ってみることにする」

「はい、何をですか」

「俺、瑠璃華さんのことが好きだよ」

と、奏さんは言いました。

心なしか、頬が赤いように見えるのですが。

…風邪でしょうか?

昨日、寒空の下を連れ回してしまいましたから。

風邪を引かれた恐れがあります。

それは申し訳ないですね。私のせいで。

で、私のことが好き、と仰ってくれたのでしたね。

「はい、私も奏さんのことが好きですよ」

「…」

「…何か?」

と、私は聞きました。

「あ、いや…。そうなんだけど。それはそうなんだけど…」

「はい。奏さんは私の一番の親友ですから、大好きに決まっています」

「だよね。だよね?瑠璃華さんはそうだよね…。でもそうじゃなくて、付き合う方の好きって言うか…」

「付き合う?はい、良いですよ。どちらにお付き合いすれば良いですか?」

「あぁぁ、そうじゃない、そうじゃないんだよ。駄目だなぁ、これだけは未だに分かってもらえない…」

と、奏さんは、天を仰いでそう言いました。

…?

「どうかしましたか、奏さん」

「…うん、いや、何でもないよ。そう…アンドロイドだもんなぁ、瑠璃華さん。そういうことを、分かってもらえるのはいつになることやら…」

と、奏さんは言いました。

私がアンドロイドであることと、今奏さんのお話しを理解することに、何の関係が?

理解不能です。

…しかし。

「…でもまぁ、そういうところも含めて好きだから、良いか…」

と、奏さんはポツリと言いました。

「何が何だかさっぱり分からないので、ご説明をお願い出来ますか」

「瑠璃華さんはそのままで良い、いや…ちょっとずつでも成長してくれたらそれで良い、ってことだよ」

と、奏さんは教えてくれました。

成程、そういうことですか。
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