アンドロイド・ニューワールドⅡ
…その、数日後。

私は、いつもの『Neo Sanctus Floralia』第4局との定期連絡に臨みました。

勝手に戦闘モードに移行し、しかも一般人である奏さんに、『新世界アンドロイド』の要とも言える、バーチャルウイングを見せてしまったことで。

久露花局長から、何らかのお咎めがあるか…と。

そう思ったのですが。

『バレンタイン!バレンタインが目前だね!バレンタイン!』

「…」

『今年のトレンド、覚えてる?フォンダンショコラだよ、フォンダンショコラ!楽しみだな〜!』

「…はい、そうですね」

と、私は答えました。

どうやら、お咎めを受ける心配はなさそうです。

バレンタインの誘惑を前に、久露花局長に冷静な判断を期待したのが無謀でした。

…ちなみに。

「奏さんですが、転校はされないそうです。来年度も、星屑学園に残留するそうです」

と、私は久露花局長に言いました。

しかし。

『あ、そうなんだ?それは良かったねー。…あぁバレンタインが待ち切れないよ!』

と、久露花局長はこの反応でした。

奏さんが、バレンタインに負けました。

私があれほど悩んでいたのが、馬鹿馬鹿しく思えてきますね。

でもまぁ、良いです。

過ぎ去ったことですから、笑って終わらせましょう。

『あ、瑠璃華ちゃん。今度、追加でフォンダンショコラ送るから!宜しく!』

と、局長は言いました。

またですか。

既に、ダース単位で届いているのですが。

まだ送るのですか。

狭いアパートが、フォンダンショコラの箱で一杯になりますね。

「分かりました」

と、私は答えました。

拒否したとしても、頭がバレンタイン一色になっている久露花局長には、何を言っても通じないでしょうから。

私一人では処理しきれないので、今度は碧衣さんや琥珀さんにも、フォンダンショコラのお裾分けをしましょう。

あのお二人とも、これからもお付き合いがあるでしょうから。

親戚付き合いは大事です。

『はぁ〜!バレンタインって最高のイベントだよね、瑠璃華ちゃんもそう思うよね!?』

「はい、そうですね」

と、私は言いました。

ひたすら、頭を空っぽにして、言い続けました。

久露花局長がいつも通りで、安心しました。

不変であることは、時に一つの財産になり得ますから。
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