アンドロイド・ニューワールドⅡ
――――――…瑠璃華ちゃんとの通信を終え。

私は一つ深呼吸して、傍らの翠ちゃんに言った。
 
「…これで良かったかな?」

「…久露花局長らしくて、良かったと思いますよ」

翠ちゃんは、苦笑いしながらそう言った。

笑ってるじゃんかー…翠ちゃん。

ってことは、やっぱり呆れてるのかな。

「怒られるかなー?紺奈局長や、橙乃局長から…」

「大丈夫ですよ、きっと。久露花局長の意図するところは、ちゃんと伝わってますよ」

そうかな。

そうだと良いんだけど。

瑠璃華ちゃんが、無断でバーチャルウイングを奏君に見せたときは、私もびっくりしたよ。

そのことを咎めるべきか否か、ちょっと迷ったんだけど…。

やっぱり何も言わなかった。バレンタイン大好きなアホの振りをして乗り切った。

いや、バレンタインは本当に大好きなんだけど。

『新世界アンドロイド』の秘匿性を重んじる局長達は、私の今回の行動に難色を示すだろうね。

瑠璃華ちゃんが勝手に戦闘モードに移行したことも、バーチャルウイングを奏君に見せたことも、ハナからこちらには筒抜けなのだ。

え、何やってんのと思って、こちらでも瑠璃華ちゃんの様子を、モニターしてずっと見てたんだけど。

二人のやり取りを見て、聞いてたら、ついこちらからは何も言えなくて。

ランデブーを盗み見ている罪悪感もあって、結局何も言えなかった。

瑠璃華ちゃんの、好きにさせちゃった。

どうして私の方から、瑠璃華ちゃんを止められるだろう。

勝手に戦闘モードに移行することも、バーチャルウイングを見せるという規則違反も。

全ては、瑠璃華ちゃんが自分の意志で、自分の心の赴くままに行ったことなんだ。

それが分かっているのに、私の方から「やめなさい」とは言えなかった。

後になって、「何であんなことしたの」と責めることも出来なかった。

「私って甘いのかなぁ?」

紺奈局長ならどうするだろう。橙乃局長なら?

もっと、毅然とした態度で、怒ったりするのかな。

私には、到底出来そうもないや。

「そうですね、甘いのかもしれません…けど」

「けど?」

「久露花局長は、そういう方ですから。第4局はそういう方針ですから。誰の咎めを受けることもありません」

…そっか。

「ありがとうね、翠ちゃん」

感謝してるよ、本当に。
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