アンドロイド・ニューワールドⅡ
翌日のホームルームで。

湯野さんの口から、遠足の行き先が発表されました。

担任の佐賀来教師と話し合って、正式に決まったそうです。

その行き先は。

「桃狩りですか…。楽しそうですね」

と、私は言いました。

「しかし、奏さんのことは気にせず、遠慮なく決めてくださいと言ったら、案の定奏さんには辛い行き先ですね」

と、私は続けて言いました。

しかし。

「覚悟してたから、大丈夫。何なら、見てるだけでも楽しいよ」

と、奏さんは微笑んで言いました。

奏さんは謙虚ですね。

「瑠璃華さんも、桃狩りは初めてでしょ?俺のことは気にせず、楽しんでおいでよ」

と、奏さんは言いました。

お気遣いには感謝します。

しかし。

奏さんも参加しなければ、意味がありません。

「大丈夫です。奏さんにも、活躍の機会は充分にあります」

と、私は言いました。

「活躍って…?」

「桃狩りですからね。奏さんは、きび団子のご用意をお願いします」

「…は?」

と、奏さんはポカンとして、首を傾げました。

あと、用意するものと言えば。

「桃狩りに必要なものは…オオカミ、ゴリラ、鷹でしたね。これらは、私が野生のものを捕獲してきますので、ご安心ください」

「ちょっと待って。ちっとも安心出来ない。何?その本来の桃太郎のお供を、全部強化したみたいな動物は」

「あとは、予想以上に桃が凶暴だったときに備えて…捕獲用の網と、あとは電気ショッカーも必要ですね」

「…マグロ漁…!?」

と、奏さんは目を見開いて呟きました。

用意するものと言えば、ざっとこのようなものでしょうか。

あ、そうだ。

「あとは、まさかりも必要ですね。大丈夫、ちゃんと用意します」

「成程、瑠璃華さんがどういう勘違いをしてるのか分かった。しかも、一方向に勘違いするんじゃなくて、多方向から勘違いしてるのがまた…器用だなと思うよ」

と、奏さんは真顔で言いました。

何故真顔モードに入るのですか。

多方向とは、どういう意味ですか?

「備えあれば憂いなし、と先人達も言っていましたから」

「そうだね。その通りなんだけど…瑠璃華さんは一度、手ぶらで来るということを覚えた方が良いと思うよ」

と、奏さんは言いました。
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