アンドロイド・ニューワールドⅡ
…しかし。
 
急いだにも関わらず、無情にも、授業開始を告げるチャイムが鳴り響きました。

仕方ありません。

他にもエレベーターを利用していた方がいて、そのせいで、エレベーターが来るまでに時間がかかってしまいました。

これは不可抗力ですね。

「幸先悪いなぁ…。二学期一発目から遅刻か…」

と、奏さんは気が重そうに言いました。

「済みません、奏さん」

「え?」

「エレベーターなど待たずに、やはり私が運搬していれば…」

「いや、運搬は良いから。それに、瑠璃華さんが悪い訳じゃないから」
 
と、奏さんは言いました。

謙虚ですね。

「遅れたものは仕方ありません。別に疚しいことはありませんから、堂々と行きましょう」

「うん…」

と、奏さんは頷きました。

私は奏さんの車椅子を押し、遅れ馳せながら、理科室に向かいました。

以前は、これで「重役出勤」だとか言われ、口論になりましたが…。

私と奏さんが、遅れて理科室に入ると。

教室の前にいた女性の生物教師は、パッと顔を上げ。

「あ、来たね。入って、席についてね」

と、何事もなかったかのように言いました。

…少し、びっくりしました。

もっと何か、嫌味が飛んでくるかと思ったのですが…。

意外と、ドライな対応でした。

いえ、これが本来、普通の対応なのですが。

これまでがおかしかったのです。

「この生物教師は、まともですね」

と、私は奏さんにこっそりと言いました。

「う、うん…。この先生は優しいよ。中学のときからそうだったけど」

と、奏さんは言いました。

そうだったんですね。

この学園にも、一人くらいはまともな教師がいるということを知りました。

先程奏さんは、幸先が悪いと言っていましたが。

この事実を知れただけでも、私にとっては、幸先の良いスタートです。

とはいえ、何度も言いますが…これが普通の対応なのですが。
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