アンドロイド・ニューワールドⅡ
誰がリーダーを務めるか、誰がこの場を取り仕切るかは、さして重要ではありません。

それより、早くテーマを決めなくては。

私達に与えられた時間は、有限です。

今日の、この授業を含め、あと5回の授業の間で、レポート課題を完成させなければなりません。

その為には、悠長に時間を浪費している暇はないはずです。

少なくとも、今日のうちに、テーマだけでも決めておかなくては。

私達のグループは、何について調べよう、という点を決めておく必要があります。

そうすれば、そのテーマについて、次の授業までにある程度、用意しておけますから。

従って。

「皆さんテーマを考えましょう。何にしましょうか?」

と、私は率先して、グループメンバーに問いかけました。

…しかし。

「だから、何でアンタが仕切ってるのよ」

「リーダーでもない癖に、偉そう」

と、湯野さんと、更に別のメンバーが言いました。

偉そう?私が?

偉いように見えるのですね。ありがとうございます。

私にも、威厳や貫録というものが、身についてきたのでしょうか。

それは喜ばしいこととして、今はグループ課題に集中しましょう。

「リーダーは誰でも構いませんが、それよりテーマを、今日のうちにも決めておかなくては」

「…」

と、グループメンバーは、無言で私を見つめていました。

どうでも良さそうな、つまらなさそうな、そんな目です。

余程、この課題に乗り気ではないのでしょうか。

何故でしょう。目先が違っていて、興味深い課題だと思うのですが。

人間にとっては、そうでないのかもしれません。

基本的に人間は、イレギュラーな事態に対して、否定的な反応を見せる生き物ですからね。

仕方ないと言えるでしょう。

しかし、何度も言いますように。

いくら気が進まなくても、これが授業で出された課題なのですから、やらない訳にはいきません。

これが個人の課題ならともかく。

グループ全員の成績が、懸かっている訳ですし。

「皆さんで考えましょう。テーマを…」

「別に何でも良いじゃん、テーマなんて」

と、グループの男子生徒は、そう言いました。

おっと。

ようやく、一人まともに返事をしてくれる人が現れましたね。

とはいえ、とても乗り気とは言えない台詞でしたが。
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