アンドロイド・ニューワールドⅡ
「え…。教えても良いけど、そんな面白くはないよ…?」

と、奏さんは言いました。

「問題ありません。別段、エンターテインメント性を求めてはいませんので」

「そ、そっか…。じゃあ言うけど…。うちのグループは、『水の中の動物』について調べようって…」

「深海魚ですか?」

「…言うと思ったけど、深海魚ではないよ」

と、奏さんは言いました。

「そうですか…」

「…瑠璃華さん、またちょっと悲しそうな顔してる…」
 
と、奏さんは呟きました。

私には心がないので、悲しい表情をするということはありません。

「でも、水の中の動物なら、深海魚も含まれるのでは?」

「…諦めきれないの…?いや、確かにそれはそうなんだけど…。でも皆、イメージとしては、深海じゃない、普通に浅瀬にいる魚とか…あとは大昔の…」

「深海魚ですか?」

「違う。深海魚から離れよう」

と、奏さんは言いました。

そうですか。それは残念です。

「古代魚?みたいなものを調べようって話になってる」

と、奏さんは言いました。

古代魚…。

…回り回って、やはり深海魚ですね。

とても興味深いテーマだと思います。

「人間の進化の遍歴から見ても、元々は水の中にいた訳ですから。生物の授業として、水の中の生態系を調べるというのは、とても有益なことだと思います」

「そっか…。そう言ってもらえると嬉しいよ。…って、俺が出した案じゃなくて、皆で考えた案なんだけど」

と、奏さんは言いました。

皆さんで話し合いが出来たというだけで、私には羨ましいです。

「最初は、犬にしようか、猫にしようか、とか言ってたんだけどね…。やっぱり、一応生物の授業だから、もっと生物らしいテーマの方が良いんじゃないか、って話になって」

と、奏さんは、テーマが決まるに至った経緯を教えてくれました。

犬も猫も、立派な生物だと思いますが。

「そうですか…。個人的には、現在『人間交流プログラム』を遂行中ですから、人間について調べたいところですね」

「う、うん…。瑠璃華さんはそうかもしれないけど、でも他のメンバーはどうかな…」

と、奏さんは言いました。

そうですね。グループ課題である以上、私の一存だけで決められることではありません。

お前が仕切るな、とも言われましたしね。

出しゃばるようなことは、やめた方が良いと思います。

「瑠璃華さんのグループは、まだ決まってないの?テーマ」

「はい、全く」

と、私は答えました。

決まってないどころか、話し合いすらしていませんね。

ひたすら、面倒臭いの応酬で終わってしまいました。

「そっか…。急いだ方が良いかもしれないね。これから、まだ調べる時間も必要なんだし…」

「そうですね…。次回の授業で、挽回するしかなさそうですね」

と、私は言いました。

今日は皆さん、初の顔合わせで緊張していたということにして。

次の生物の授業で、遅れを取り戻すことにしましょう。
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