アンドロイド・ニューワールドⅡ
本日が、二回目の生物の授業です。

二回目以降、生物教師は授業の冒頭だけ教室に来て、点呼を取ります。

そして、授業への出席を確認すると、生物教師は残りの時間を、課題に費やすよう指示し。

自分はそれ以上の口出しをせず、生徒の自主性に任せて、教室から出ていってしまいました。

セルフ授業ですね。

その間生徒達は、図書室に行って調べ物をしたり。

コンピューター室の利用も許可されているので、パソコンで調べ物をしたり。

そのまま理科室に残って、グループで話し合ったり、模造紙を囲んでペンを動かしたりしています。

奏さんの第2グループも、今日からいざ、水中の生物について本格的に調べるとのことで。

点呼を取った後すぐ、図書室に行ってしまいました。

他のグループも同様に、グループ課題の為に、動き始めています。

…そうだというのに。

私の第4グループは、全く、何の動きもありません。

私以外の、湯野さん含む女子生徒三人は、ぺちゃくちゃとお喋りに夢中。

残る男子生徒二人は、教室に教師がいないのを良いことに、好きなことをしています。

グループ課題の方は…全くノータッチで。

こんな調子で、本当に大丈夫なのでしょうか。

一回目で何も話し合いが進んでいないので、この二回目で、挽回しなければならないだろうと思っていたのですが。

何だか、皆さんのんびりしていらっしゃいますね。

人生に対する余裕を感じさせます。

生き急いで焦るよりは、ずっとマシだと思います。

が、全く焦らないというのも、どうかと思います。

授業の機会は、五回しかない訳で。

その限られた五回の中で、時間配分をし、課題を完成させなければなりません。

ただでさえ第4グループは、一回目の授業を、ほぼ棒に振っている訳ですから。

二回目の今日、何も進展がなけれな、かなり不味いのでは?

次はもう三回目になってしまいますよね?半分を越えてしまいます。

それなのに、皆さんそんなことを感じさせない、人生への余裕を見せています。 

これで大丈夫なのでしょうか?

私は人間ではなく『新世界アンドロイド』なので、判断しかねます。

ここは、皆さんに尋ねてみることにしましょう。

「皆さん、ちょっと宜しいでしょうか」

と、私は声をあげましたが。

「やっぱり、ピーチレッドが可愛いかなぁ」

「いや、実物見たけど、結構色が濃くて微妙だった」

「マジ?じゃあサクラレッドかなー」

と、女子生徒三人は、そっぽを向いてお喋りに夢中です。

何の話かは、分かりかねますが。

「ピーチもサクラも、今は季節ではありません。暦の上では、現在は秋ですから」

と、私は言いました。

桃と桜の話をするなら、春にしましょう。

今は秋、そして生物の授業の話をしましょう。

と、私は思ったのですが。

「…は?」

と、湯野さんはジロッ、とこちらを睨みました。
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