アンドロイド・ニューワールドⅡ
は?ではなく。

「課題について、話し合いをしなくても良いのですか?」

と、私は尋ねました。

彼女達が、残る三回の授業で、課題を達成出来ると言うのなら、止めはしませんが。

あるいは、生物の課題なんてどうでも良い、成績評価もどうでも良い、と思っていらっしゃるのでしたら。

それもそれで、止めはしません。

私自身、成績表には全く、興味関心がありませんから。

『Neo Sanctus Floralia』での評価なら気になりますが。

人間からの評価など、『新世界アンドロイド』である私には、どうでも良いことです。

すると。

「うざっ。何この電波ちゃん。何か言ってる」

「電波菌が移るんだけど?近寄らないでくれる?」

と、湯野さんともう一人の女子生徒は言いました。

…電波菌…!?

そのようなものが、空中に飛散しているのでしょうか。

聞いたことのない菌の種類ですが、声音からして、彼女がその菌を忌避しているのは明らかです。

「電波菌…?その菌は、危険なものなのでしょうか?」

「そーそー、危険危険。だから近寄らないで」

と、湯野さんは、半笑いで言いました。

出ましたね。湯野さんの特技、悪癖笑顔。

今学期も、元気に継続中です。

しかし電波菌ですか…。帰って調べてみる必要性がありそうですね。

大抵の菌やウイルスは、『新世界アンドロイド』には作用しませんが。

稀に、低ランクのアンドロイドが、高度なウイルスに侵されて、その駆除に苦労することがあります。

Sランクの『新世界アンドロイド』がウイルス攻撃を受けた、など聞いたことがありませんが…。

それでも、油断は大敵です。 

人間が、風邪や病気に敏感であるように。

私達『新世界アンドロイド』もまた、常に、ウイルスには万全の備えをしておくべきですね。

…ん?しかし、彼女が今言ったのは、ウイルスではなく、菌でしたね。

病原菌に侵される『新世界アンドロイド』…。全く聞いたことがないのですが。 

そんな危険な菌があるのでしょうか。分かりません。

…それはともかく。

「私が菌に侵されるのではないかと、心配してくれてありがとうございます」

「は?何言ってんの…?」

「それはそれとして、生物の課題についてはどうしましょう。他のグループは、既に調べ物に入っているようですが…。我々も、そろそろ具体的なテーマくらいは、決めておいた方が、」

「…でさ、一緒にマニキュアも出てたじゃん?あれも良いよね」

「あー、見た見た。オレンジが良い色っぽかったけど」

と、グループの女子生徒達は、再び自分達の話に戻ってしまいました。

オレンジ色は良い色ですね。私もそう思います。

が、それは生物の課題に、何か関係があるのでしょうか。

「お三方共、オレンジ色は良い色ですが、それはともかく生物の課題は、」
 
「今度お小遣いもらったら、マニキュアも買おうかな」

「でも、あのブランドって毎年、冬の方が豪華だよね。冬まで待った方が良くない?」

と、湯野さんは言いました。

冬まで待っていたら、授業が終わってしまいますね。

悠長も、ここまで来るとあっぱれです。
< 75 / 467 >

この作品をシェア

pagetop