アンドロイド・ニューワールドⅡ
「ひ、一人って…?瑠璃華さん、まさか一人で課題やるの?」

「はい」

「何で!?それグループ課題じゃないじゃん!」

「はい。私もそう思います」

と、私は答えました。

私個人の課題になっていますね。

6人分の課題を背負って立つとは…。私はもしかしたら、大物なのかもしれません。

大変名誉なことです。

「ですが、グループメンバーの一人が、『やりたきゃお前一人でやれ』と私に言いまして、他のメンバーもそれに同調したので」

「だ、だからって…瑠璃華さん一人がやるの?」

「はい。私は彼らに課題を託されたのです。きっと、信用されている、期待されているということなのでしょう。転入生である私が、このような大役を任されるとは…。我ながら出世したものです」

「いや、それ、面倒なことを押し付けられてるだけじゃ…?」

「はい?」 

「あっ、いや何でもない…」

と、奏さんは言いました。

そうですか。

「私の腕の見せ所です。素晴らしいレポートを作り上げてみせましょう」

「そ、その心意気は買うけど…。でも一人でって…。た、大変じゃない?」

と、奏さんは聞きました。

心配してくださって、重ね重ねありがとうございます。

しかし。

「大丈夫です。この程度、負担ではありません」

「それなら良いけど…いや良くないけど。やっぱり、今からでも他のメンバーを誘って…」

「市民図書館だけでは、書物が少ないかもしれませんね。ここはいっそ足を伸ばして、県立図書館にも行ってみましょう。より、たくさんの資料が集められると推測します」

「あ、なんか瑠璃華さんノリノリだ…」

と、奏さんはポツリと呟いていました。

「ちなみに、テーマは何にしたの…?」

と、奏さんは聞きました。

よくぞ聞いてくれました。

「テーマは毒キノコです」

「ぶはっ」

と、奏さんは飲んでいたお茶を噴き出しました。

大丈夫でしょうか。

「気管に入りましたか?」
 
「い、いや、げほっ…。げほっ、そ、そうじゃなくて…。な、何で毒キノコ…?」

と、奏さんは聞きました。

「生物と聞いて、一番最初に出てきたのが毒キノコだったからです。こういうものはやはり、最初の勘を頼りにするべきかと思いまして」

「何で生物と聞いて、一番にキノコを思い浮かべたんだろう…」

「キノコ、菌類もまた、生物の一つではありませんか?」

「うん。そうなんだけどね?それはそうなんだけど…。…やっぱり、瑠璃華さんは瑠璃華さんだなぁ…」

と、奏さんは遠い目をして呟きました。

私は私って、どういう意味なのでしょう。それは当たり前のことでは?

「私は必ず期限内に、模造紙いっぱいに毒キノコを調べ、レポートを完成させてみせます。奏さん、応援していてください」

「う、うん。頑張ってね…?」

と、何故か奏さんは、疑問形で私にそう言いました。

激励ありがとうございます。

やはり、友人の応援があると、モチベーションが違いますね。
< 85 / 467 >

この作品をシェア

pagetop