アンドロイド・ニューワールドⅡ
「ようやくって、どういうこと?」

と、奏さんは聞きました。

よくぞ聞いてくれました。

「私は夏休みの間から、この調理実習の授業を待っていたのです」

と、私は言いました。

そう、調理実習です。

一学期は座学が多かった家庭科ですが、二学期からは家庭科室に移動し、実習形式の授業が増えるそうです。

いよいよ、という気持ちですね。

「二学期は調理実習があるかもしれないと、他校の同類にアドバイスを受けていたのです。故に夏休みの間、私は来たるべき調理実習に備えて、料理を練習しました」

「あ、あー…。そういえば…そんなこと言ってたね…」

「あのときの経験が、今こそ活かされるときです。存分に、私の料理の腕を披露します」

「そっか…。頑張ってね」

と、奏さんは言いました。

二学期に調理実習があるかも、と言った碧衣さんの言葉は、正しかったのですね。

さすがは『人間交流プログラム』の先輩です。

彼も立派な料理を作っていましたから、私にも出来るでしょう。

そう、私は夏休みの間に、お茶漬けを作りましたしね。

料理経験は、豊富と言って差し支えないでしょう。

レポート課題同様、腕が鳴ります。

「はい、それじゃあグループ分けを発表します」

と、家庭科教師は言いました。

この授業では、グループ分けはくじ引きではなく。

家庭科教師が、事前にランダムに決めたグループで行うようです。

そういうグループ分けも良いですね。

と、思っていたところ。

「…さん。次、第4グループは…緋村君、久露花さん、湯野さん、…さん、…さん、…君。次、第5グループは…」

と、家庭科教師は、決めていたグループのメンバーの名前を読み上げました。

私、今呼ばれましたね。

また第4グループです。

『Neo Sanctus Floralia』でも第4局所属で、学校でのグループも、第4グループばかりとは。

私は余程、4という数字に縁があるようです。

しかも、先に奏さんが呼ばれていましたね。

ということは、つまり…。

「奏さん、私達同じグループのようですね」

「そうだね、今回は…。宜しく」

「はい、宜しくお願いします」

と、私は言いました。

奏さんが同じグループとは。とても心強いですね。

…そういえば、湯野さんの名前も呼ばれていましたね。

彼女とも、また同じグループということですか。

彼女にも縁があるのかもしれません。

特に縁を結びたい相手ではないので、喜ばしいことだとは思いませんが。

いえ、でももしかしたら、万が一ということもあります。

この家庭科の調理実習を通して、湯野さんとも、仲良くなる機会に恵まれるかもしれません。

同じ釜の飯を食った仲、という言葉もあることですし。

湯野さんと調理実習を共にしたら、我々の冷えた関係が、何か改善されるかもしれません。

世の中、何がきっかけになるかは分かりません。いつでも、その時が来ても言いよう、準備はしておくべきですね。

そう判断した私は、湯野さんにも声をかけることにしました。

「また同じグループですね。この度は宜しくお願いします」

と、私は湯野さんに言いました。

しかし。

「…」

と、湯野さんは迷惑そうにこちらを一瞥しただけで、無言でした。

挨拶すら、許してはくれないようです。

難しいお年頃ですね。生理前でしょうか。
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