アンドロイド・ニューワールドⅡ
では、気を取り直して。

「それでは、実習で作る献立を決めましょうか。どなたか、意見のある人はいらっしゃいますか?」

と、私は尋ねました。

しかし。

「…」

と、湯野さん含む女子生徒三名は、むっつりと口を閉じています。

男子生徒一人も、我関せず、といった態度。

奏さんは、それを見て困ったような顔をしていました。

成程、皆さん、特に意見はお持ちでないと。

「では私が。お茶漬け4種を提案します」

「ぶはっ」

と、奏さんは噴き出しました。

大丈夫でしょうか。

「何か面白いものでも見えましたか?」
 
「いや、なん…何でお茶漬け…?」

「鮭茶漬け、梅茶漬け、昆布茶漬け、わさび茶漬けの4品で良いかと思ったのですが」

「それ…栄養バランスはどうなの?」

と、奏さんは尋ねました。

良い質問です。

「鮭でタンパク質が、梅、昆布、わさびでビタミンが、白米で糖質が摂取出来ます。更に、そこに不足しているビタミン類の食材を追加することで、バランスも取れると思います」

「な、成程…って、納得しちゃ駄目でしょ。瑠璃華さん、そうじゃないんだよ」

と、奏さんは言いました。

「何か問題がありますか?」

「食事って、栄養バランスが全てじゃないから…。そもそも、それじゃ白米過多だし、献立でもないよ。献立って言ったら、一汁三菜が基本でしょ?」

と、奏さんは言いました。

成程、確かにそうかもしれません。

一汁三菜、計4品ですね。

だから、家庭科教師は、4品作るように指示したのかもしれませんね。

納得しました。

「では、代案を聞かせて頂けますか?」

と、私は奏さんに言いました。

他人の意見に反論するのであれば、代案を提示するのが基本です。

代案も考えず、他人の意見を扱き下ろす権利はありません。

すると。

「そうだな…。一汁三菜をベースにして…。お味噌汁と、メイン料理1品と、副菜2品…が基本かな」

と、奏さんは言いました。

成程、献立の基本ですね。

しかし、ここで更に異論を唱える方が一人いらっしゃいました。

「何それ、つまんない。味噌汁とかダサくない?」

と、奏さんを幽霊と呼んだ女子生徒は言いました。

味噌汁という食べ物が、ダサいのかどうかは別にして。

「他人の意見に反論するのであれば、代案を提示してください」

と、私は言いました。

代案を提示せず、人の意見にケチをつけるだけなら、そんな意見は要りません。

「…うざっ。何でそんな命令口調なの…?」

と、奏さんを幽霊と呼んだ女子生徒は、ボソッと呟きました。

そんな小声で仰らなくても、堂々と言ってくれて結構ですよ。

「副菜とかはどうでも良いからさ、デザート作ろうよ。デザート作りたい」

と、湯野さんは言いました。

デザートですか。それは立派な代案ですね。

家庭科教師も、デザートを作っても良い、と言っていましたからね。

副菜を、デザートに替えるのはアリでしょう。
< 96 / 467 >

この作品をシェア

pagetop