アンドロイド・ニューワールドⅡ
「では、ひとまずデザートについては、作るのが比較的簡単そうなものにする、ということにして…」

と、私は話をまとめました。

実習で作るのは4品。そのうちの一品であるデザートを決めただけで、話し合いを終える訳にはいきません。

「他の3品はどうしましょう?」

と、私は聞きました。

奏さんはお味噌汁、と言っていましたが。

今のところ、異論は出たものの、代案は出ていないので、このままだとお味噌汁案で決定です。

古き良き和食ですね。

「折角なら、フレンチのコース作らない?ポタージュに、副菜はガレットで、メインはステーキ!みたいな」

と、奏さんを幽霊と呼んだ女子生徒は言いました。

材料費がかかりそうですね。

ついでに、手間もかかりそうです。

「良いね〜。それ採用しようよ」

「だね。お洒落じゃん」

と、湯野さんともう一人の女子生徒も、賛同しました。

成程、分かりました。

「奏さんはどう思います?」

「えー…と、どうなんだろう…?フレンチって…皆、作れるの…?」

と、奏さんは尋ねました。

「は?馬鹿にしてんの?レシピがあれば、誰だって作れるでしょ」

と、湯野さんは刺々しく答えました。

「でも…。誰か、作ったことある人、いる?料理得意な人とか…」

と、奏さんは尋ねました。

料理が得意な人?

「それは私のことですね。夏休みの間に練習しましたから。料理は完璧です」

「うん、それは知ってるけど…。でも瑠璃華さんが作ってくれたのって、お茶漬けだから…。正直あまり信用出来ない」

と、奏さんは言いました。

私に心はありませんが、もし心があったなら、今頃ガーン!!という効果音が鳴り響いていたところですね。

お茶漬けでは、信用してもらえないというのですか。

「フレンチのレシピって…いくら簡単なものを探したとしても、手間がかかりそうだし、材料を揃えるのも大変そうだし…。ここはオーソドックスな…ハンバーグとか作ったらどう?」

と、奏さんは提案しました。

あなたは碧衣さんですか。

「緋村ってさぁ、何でそんなつまんないことばっか言う訳?」

と、湯野さんは不満そうに言いました。

「そうだよ。折角の調理実習なのに、ちょっとは冒険してみようとか思わないの?」

と、もう一人の女子生徒も言いました。

「…それは…」

と、答えに窮する奏さんです。

何だか、グループが険悪なムードになってきましたね。

ここはリーダーとして、状況を打開しなければなりません。

そこで。

「…ずっと黙っていらっしゃいますが、あなたはどう思われますか?」

と、私は、ずっと黙っていた男子生徒に、声をかけてみました。
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