望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「奥様。今日はお庭を案内させていただきます」
　侍女のメアリーは、カレン付きの侍女である。メアリーは元々ジェレミー家で勤めていた侍女。
　カレンはこのジェルミー家に嫁ぐにあたって、侍女を連れてきていない。むしろ、カレンについてきてくれるような侍女などいなかった。

「この庭はとても素敵な空間ですね」
　カレンが言うと、メアリーは口元を緩める。
「奥様にそう言っていただけて、光栄です。庭師にも伝えておきます」

　アドニスのおかげだろう、と思っていた。この屋敷にとって望まれていない花嫁のはずなのに、使用人たちの幾人かは次第にこうやってカレンのことを受け入れ始めようとしている。メアリーもそのうちの一人。
　最初はカレンのことを遠目に見ていた使用人たち。彼女に何かしようとするものならば、恐る恐るという表現が正しいだろう、そうやってカレンに接していた彼ら。
　彼らは恐らくダレンバーナの花嫁の噂を耳にしているはずだ。いや、絶対に。

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