望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「奥様」

「聞こえなかったの? もう、いいわ。私が出ていきます。こんな食事、食べられたものじゃないもの」
 カレンが勢いよく立ち上がると、椅子が後ろに倒れた。それも気にせず、カレンは食堂を出ていく。振り向きもせずに、自室へと向かう。
 後ろからはボソボソと声が聞こえている。だが、振りむいてはならない。
 カレンは自室に入るとドアを閉め、そのままドアを背にして突っ立っていた。大きく息を吐く。
 家に戻る前にやっておきたかったのは、あのダレンバーナの息のかかった料理人をクビにすること。つまり、この屋敷から追い出すこと。彼がいる前で、レイモンドと二人でここを離れるのは危険だった。二人で()()()に行った、というその情報がダレンバーナにまで流れる可能性があるからだ。

 だが、あの料理人がおとなしくここを去るわけがないとも思っている。動くなら、間違いなく今夜だ。
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