望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「いいえ。これを過ぎればすぐですから、行きましょう」

「だが、夜の森は」

「ええ、承知しております。ですが、旦那様は私が魔導師であることをお忘れのようですね」
 カレンは不適に笑んだ。だが、今のレイモンドから見たらこの笑みも愛おしい。

「君を信じよう」
 レイモンドも笑い返した。二人を乗せた馬はうっそうとした森の中へとその足をすすめた。
 日は沈み、代わりに夜の帳が下りてきた。昼間でも薄暗い森の中は、さらに闇に包まれる。だが、彼らの周りだけは明るかった。

「魔法にはこのような使い方があるのだな」
 レイモンドは感心したように言った。

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