望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「ええ、魔法の本来の目的は、私たちの生活を豊かにするためのものです。けして、人殺しに利用するためのものではございません」
 だが、その魔法で初めて人を殺めてしまった。この魔法を人殺しに使うと決めたのはカレン自身。口ではいくらきれいごとを言ったとしても、人を殺してしまったという事実は消えない。
 カレンはきゅっと拳を握りしめた。レイモンドは彼女の身体が強張ったことに気付いた。だが、それに気付いていない振りをする。
 カレンは馬が疲れて止まりそうになると、回復の魔法をかけた。すると、元気の無かった馬は再び動けるようになる。だから、大した休憩をとることなく、馬を走らせることができた。
 次第に森が明るくなろうとしている。木々の隙間をぬぐうようにして光が差し込み始めたころ、森を抜けた。ここからは細い一本の道。それは、緩やかな上り坂になっている。この坂を上り切ったところに彼女の生まれ育った家がある。目の前にそれが見えた時に、カレンは胸にこみあげてくるものがあった。それを何と呼んでいいのかはわからないし、どのように表現したらいいかもわからない。ただ、喉の奥が凄く痛い。

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